第57期DTPエキスパート認証試験講評
3月に実施したDTPエキスパート認証試験の結果概要と講評を掲載する。
第57期試験は、2022年3月13日(日)全国4会場および指定講座3会場、合計7会場にて行い、5月19日Web上にて合格発表を行った。
受験者数は昨年3月試験比で115.2%、受験者属性としては印刷・製版業が昨年より盛り返し、全体の55.6%となった。職種傾向としては、デザイン・制作者が全体の43.6%と増加傾向にあり、続いて営業職が19.9%と引き続き主要層となっている。
学科試験新問題と結果
学科試験は大問103問のテーマについて620設問の解答が求められた。合格率は、54.2%となっている。今期の新項目出題のポイントとしては、以下の点が挙げられる。
ストックフォト
近年増加する画像、イラスト、アイコン、音楽ファイル等のストックコンテンツについて、Web上でのデジタルデータによる提供の仕組みが充実したことにより、その活用が進んでいる。活用に当たっての課金方式、著作権や各種許諾条件等について知識を確認する出題を行った。
水なしオフセット印刷
印刷知識の拡充問題として、近年環境に優しいオフセット印刷としても注目されている水なしオフセット印刷を取り上げた。
SDGsと印刷ビジネス
製造業をはじめ各企業において、国際的社会課題であるSDGsへの対応が必須となっている。商品・サービスの最終利用者である生活者の意識、消費行動の変化とともに、把握すべき基本知識の確認を行った。
改正個人情報保護法
ビッグデータを一元管理する仕組みの進展により、個人データの定義に収まらない情報についても個人の権利を侵害する恐れが生じている。この点を盛り込んだ2022年4月施行の個人情報保護法改正ポイントを把握するための出題を行った。
数式組版
学習参考書や医薬・理工・情報系専門書の制作に用いられる数式組版について、その利用場面やツールに関する出題を行った。
実技試験のテーマと傾向
今期のテーマは、40代男性をターゲットとした総合ライフスタイル雑誌の連載企画ページをデザインレイアウトするものとなった。現代ならではのアーティストの出現プロセスに焦点を当て、「40代男性がついて行けていない、けれども流行に乗り遅れたくない、知りたいと思っている音楽ジャンル」(実技試験要項与件文より)を扱う。
この課題では、若年層に関するトピックでありつつも読者層に適したデザインで訴求することが求められた。提出された制作コンセプト書からは、「読者ターゲットを想定した大人の落ち着き、オーソドックスさ、ジェンダーギャップのあるコンテンツを最後まで読んでもらうためのシンプルな読みやすいデザイン」といった主旨の記述が多く見受けられ、出題の意図を汲んだコンセプトが概ね立てられていたといえる。加えて「アーティストの躍動感、動と静」という点に着想した記述も見られた。
制作コンセプトについてはどれが正解、ということではなく、与件情報を正確に読み取り、制作背景を踏まえてレイアウトデザインの常識に沿った一貫性ある指針が記述されているかどうか、という観点で採点される。
支給素材を基に制作する誌面データでは、上記制作コンセプトが実現できているかどうかをデザイン/レイアウト、文字/組版、画像/色等の面から問うとともに、印刷入稿用データとしての適性度を見る。
今期の課題では、複数の情報階層レベルのキャッチコピーと連載タイトル、リード文が提示され、各々の意味合いや位置づけを捉えて効果的に配置や文字組を調整しているか、さらにタイトルから本文への誘導に適した配置となっているか、という点が合否に大きく影響した。
実務で多くの経験を積まれているように見受けられる完成度の高い提出物が見られる一方、タイトル周りのレイアウトデザインに難があり、アイキャッチ、視線誘導の妨げになり合格ラインに達しなかったものも多かった。
その他、支給された2種類の楽器画像について、実物のサイズに応じた調整ができているか、という点も問われた。楽器単体の画像では2つの楽器は同じ大きさに見えるが、アーティストが楽器を抱えている画像を見ると実寸は大きく異なることが分かる。支給された原稿をそのまま配置するだけでなく、レイアウトにあたって事実確認を行う姿勢も今後の制作者には求められるであろう点を要件に盛り込んだ。
今回はこの点の対応ができている提出物はごく少なく、大きな減点にはしなかったが、今後支給素材の扱いに関しては実業務での要求レベルを勘案して試験に盛り込んでいく可能性がある。
(DTPエキスパート認証委員会)
【8月28日開催】第58期DTPエキスパート認証試験
開催地:東京・大阪・名古屋・福岡・仙台・札幌 および指定講座会場
申請受付:6月30日(木)~8月5日(金)