英国印刷ビジネス最近のトピックを紹介
エリザベス女王の逝去、新首相の就任と、大きなニュースの続く英国について、最近の印刷ビジネスにまつわるトピックをいくつかご紹介します。
英印刷関連団体エネルギー問題に関し新首相へ申し入れ
印刷関連団体及び印刷会社のアライアンスであるGraphic and Print Media Alliance (GPMA)
は、英国新首相トラス氏就任早々、産業用エネルギー価格の上限設定、または大規模な事業損失に対する政府による施策を求めた。
依然続くサプライチェーンの混乱によるコスト上昇は、ビジネスの持続可能性をリスクにさらしており、印刷業は、法人向け印刷価格の引き上げを図るか、自社内でコストを吸収するかという選択を迫られている。
GPMAは政府に対し、エネルギー集約型企業および中小企業にとってはエネルギー価格上昇の打撃が特に大きいことを理由に、印刷業に関わる雇用を守る観点からも下記の点を議論の対象としている。
- 産業用エネルギー価格の抑制施策と供給量の調整
- 産業用エネルギー価格に関するEU標準との調整
- 事業特性に即した特化サポート
- 事業用金利の凍結
政府の生活者支援の優先は認めつつも、企業への支援がないと値上げにより最終消費者にコスト転嫁されることになり、補助金等を支給しても生活物資の値上げで相殺されてしまう、としている。
GPMA Statement on Energy 2022.9.7
英国チャリティ委員会登録の印刷チャリティによる人材アワード
イギリスにはチャリティ委員会という独立した法人格を持つ行政機関がある。各種慈善団体による登録申請についてチャリティ委員会が審査し、適格とみなすとチャリティ資格が付与される。チャリティ委員会は登録団体及び委員会の活動を年次報告として議会に提出し、国民に対する説明責任を果たす、という仕組みとなっている。
Printing Charityはそうした団体の一つで、200年にわたり印刷業界に関する慈善活動を行っている。2016年には、ウインザーの王立製本所でのワークショップを含む『Queen’s Bindery Apprenticeship Scheme』(製本スキル習得コース)という制度も設けているようだ。
活動の一環として、印刷業界における若手の優れた才能を認めキャリア形成につなげてもらうアワード、「ライジングスターアワード」が毎年開催されている。今年の受賞は7月に発表され、リーダーシップ、マーケティング、ジャーナリズム、出版、その他実践的スキルなどを対象に52名の受賞者が決定した。従来性別の偏りが見られた印刷業界ではあったが、今回の受賞者はそうした既存の慣習にとらわれない多様な顔ぶれとなった模様だ。
コモンウェルス・ゲームズ2022では7,000枚以上の旗をデジタル印刷で提供
コモンウェルス・ゲームズ(英連邦競技大会)は、英連邦に属する国や地域が参加して4年ごとに開催されるスポーツ競技大会だ。先日2022年大会がイングランド、バーミンガムで開催された。
大会では、試合で用いる72か国(または地域)の国旗、および25個のイベント会場をはじめ各種パレードやセレモニーで用いられるものなど、7,000枚を超える旗が用いられた。これらの旗制作を受注したのはチェスターフィールドに本拠を置くBanner Box社で、MimakiおよびEFIのデジタル印刷機で製作している。
なお、これらの旗は使用後ほかのスポーツイベントで再利用されるか、適切なポリエステルリサイクル処理を行う。こうした点も説明するところは環境への配慮が問われる英国らしい習慣だ。
(JAGAT研究調査部 丹羽 朋子)