第60期を迎えるDTPエキスパート試験

掲載日:2023年5月22日
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DTPエキスパート創設のきっかけ

1990年代、印刷業界は大きな転機を迎えることとなった。つまり、印刷の前工程であるプリプレスが、フィルムを介した光学的な手法からコンピューター上のデータ加工であるDTPへと変革することとなった。

DTPが導入される以前の印刷物制作は、デザイン・写植版下・製版・刷版・印刷・製本加工と各工程が縦割りで、独立していた。そのため、工程ごとの専門家は多いが、総合的な知識を保有している者は少なかった。

つまり、文字部門の従事者は製版や印刷を知らず、印刷部門の従事者は文字や画像について詳しくないことがほとんどであった。また、1990年代前半はパソコン自体が普及しておらず、DTPを構築・運営するためのコンピューターの知識がない人がほとんどだった。

国内でDTPが紹介された頃、導入の最大のネックとなったのは、実は総合的な印刷知識を持つ人材が少ないことだった。

JAGATは、DTPによる印刷物制作の普及するには、文字・画像・印刷、およびコンピューター知識を保有する人材育成が最重要と考えていた。そこで、1993年に『DTPエキスパートになるためのカリキュラム』をまとめ、翌1994年に第1期DTPエキスパート認証試験を実施した。

DTPエキスパート30年の進化

1994年以降、 DTPエキスパートは年2回の試験を実施してきた。本年8月、DTPエキスパートは30年目となり、第60期試験を実施する。これまでの受験者は50,000人以上、合格者は23,000人を超えている。

30年を経て、印刷技術、および印刷を取り巻く環境は大きく進化した。写真はデジタルデータ入稿となり、写植・版下・レイアウトはDTPに、製版フィルムはCTPに置き換えられた。校正も大きく変化し、PDF校正やリモート校正・デジタル検版が普及している。また、主要な印刷方式にデジタル印刷が加えられた。

さらに、コンピューターやWeb環境・スマートフォンが日常的なものとなった。エキスパート試験でも、セキュリティー・個人情報保護などの要素が増え、印刷物とコミュニケーションなど、印刷技術と印刷ビジネスの進化が反映されている。

2段階制となったDTPエキスパート

DTPエキスパート認証制度は、2020年3月より学科試験だけのDTPエキスパート、学科+実技試験のDTPエキスパート・マイスターという2種類・2段階制となった。

近年は営業・企画部門の受験者も増えており、学科試験だけのDTPエキスパートが創設された。DTPと印刷知識をバランスよく習得することができ、共通言語を理解することができる。

また、DTPエキスパート・マイスターは、デザインおよび印刷データ制作のエキスパートという人物像を想定している。ある程度の経験とデザイン技能が求められるため、何度でもトライできる2段階制となっている。

現在の印刷技術や印刷ビジネスに必要な知識・技能の習得、個々のスキルアップ、または人材育成の手段として、DTPエキスパートを活用してはいかがだろうか。

(資格制度事務局 千葉 弘幸)

■DTPエキスパート認証制度