第59期試験講評~マイスター20名、エキスパート49名を認証~

掲載日:2023年5月25日
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2023年3月に実施したDTPエキスパート認証試験の結果概要と講評を掲載する。

コロナ対応も一段落し平常化へ

コロナ禍での開催は7回目を迎えたが、この3月より政府による感染拡大防止ガイドラインが見直しとなったことも受け、当日の会場での対応も徐々に平常試験時に戻しつつある。コロナ対策の特例として当日受験会場に赴くことに不安のある方は事前申し出により次回への試験延期を受け入れてきたが、新型コロナウイルス感染症の5類引き下げが決定したことを受け、振替の対応も今後は行わない方針だ。

今期受験者の属性としては、マイスター取得希望者とエキスパート取得希望者の比率は約4:6となった。業種・職種は従来と変わらず印刷関連業のデザイン・制作職、営業職の方が中心、年代としては20代~30代前半が中心層であり、若年人材の学習手段となっていることが分かる。エキスパート認証については、40代以降のベテラン人材も一定割合取り組んでいることから、知識整理の手段としても活用されている模様だ。

丸暗記と理解しながらの暗記

今期試験は、以下の項目を中心に内容を入れ替えた。

(1)和文書体の特徴と選択

(2)日本語組版の基本

(3)画像入稿から修正のワークフロー

(4)コンテンツに関する権利とマネジメント

(5)PDF入稿の基本

(6)印刷用紙の種類と用途

(7)脱炭素社会と印刷ビジネス

(8)無線LAN

学科合格率は48.4%となった。新出題項目だけでなく、既存項目を新たに問い直す問題でも正答率が低い傾向がある。各種解説書や公式模擬問題などで学習する際、暗記だけでも一定の学習にはなるが、丸暗記ではなく一つ一つ理解しながら覚えていくという姿勢で臨むことで、こうした修正問題にも対応していただきたい。

プロフェッショナルなデザインデータの取り扱い

マイスター認証創設以降通算6回の実技試験では、冊子の企画ページ見開き2ページのデザインレイアウトという課題としてきたが、今回はペラ物の新課題として、演劇公演案内フライヤーの両面をデザインレイアウトする課題を提示した。

出題のポイントとしては、

  • 表面特色+BKの2色、裏面プロセス4色という印刷条件を正しく理解しデータ制作する(印刷適性)
  • 公演ストーリーに即したイメージ表現という発注者の要望を汲んでデザインする(デザインレイアウト)
  • 出演者写真のサイズや色味の違いを正しくトリミング、補正する(画像/色)
  • 縦組み、横組みの指定に沿って、情報を効果的にレイアウトする(文字/組版)
  • 公演日程の表組をわかりやすくインフォグラフィックとして表現する(デザイン/レイアウト)

といった点が挙げられる。(上記括弧内は評価項目名)

提出物の傾向としては、上記の印刷条件に沿った色数でデータ制作できていないものが多数見受けられた。支給画像をダブルトーンにして表面に配置するという要件が提示された。ダブルトーンにする際に作成されるブラック版とレイアウト紙面で使用しているブラック版の名称が異なるため、特色+ブラック2版で合計3版存在してしまっているものが多かった。

また、裏面はプロセス4色の指定となっているが、特色扱いで支給されたメインビジュアル素材を4色指定値に修正せずに特色のまま配置してしまった結果、特色+4色となってしまっているものなどもあった。

こうした色数、色版名の確認は、PDF上の分版プレビューで要項記載の印刷条件に沿っているかを確認して欲しい。実務でも必須となるので、データ制作者として確実に押さえておきたいポイントである。

デザインレイアウトに関しては、縦組み・横組み箇所の視線誘導が合否のポイントともなった。情報ごとのまとまり、グループ化の意識なく配置されているもの、意図なく縦横の指定通りに並べただけのものは、どこからどこへ読み進めてよいかがつかめず、フライヤーとして機能しない。合格者はこの難所を公演内容(謎解きミステリー)のイメージと重ね合わせてむしろ効果的な印象付けに活かした工夫が見られた。

今回の課題は、伝える内容の理解、表面ではメインビジュアルを中心とした公演内容の訴求、裏面では情報の効果的な演出、それに加えて多様な印刷条件に適応するデータ制作という多くの要件が設定されていたが、いずれもプロフェッショナルな制作者にとって欠かせないスキルでもある。この実技試験を通して、多様なコンテンツ制作実践の機会にしていただきたい。

(DTPエキスパート認証委員会)

【2023年8月27日開催】第60期DTPエキスパート認証試験

開催地:東京・大阪・名古屋・福岡・仙台・札幌 および指定講座会場

申請受付:2023年7月4日(火)~8月3日(木)

JAGAT初の実技解説専用書籍 2023年7月発刊予定