第44期DTPエキスパート認証試験 出題の意図と解答(提出物)の傾向
2015年8月30日(日)に実施した第44期試験結果を11月6日(金)Web上で発表した。今期出題の意図を提出物の傾向とともに掲載する。
結果概要
筆記試験と課題制作試験を合わせた最終合格者は180名(合格率39.2%)
筆記試験
カリキュラム第11版に基づき、「DTP概論」「色」「印刷技術」「情報システム」「コミュニケーション」の各カテゴリーにおいて各々正答率80%以上を合格基準として出題設定した。 今期より実技試験で新課題として設定したDMハガキに関する知識を学科試験にて問うための新問題をはじめ、実務上直面している事象傾向や人材教育指導の現場での現況などから、
- Web用データとの画像データ兼用を背景に増加している画像のRGBデータ入稿
- 変化するソフトウェアラインセンス使用形態 サブスクリプション契約
- データ保全の信頼性とともに重要性を増すストレージ関連
- 印刷業におけるクラウド利用
- HTML5問題の整備
等の項目について新問題を出題した。 新出題項目問題について初出の問題ということで依然正答率が低くなる傾向があるが、必ずしも最先端の知識を要するものばかりではなく、事前に公表される新項目に関する一般的知識で対応可能な問題もある。新出題項目情報にも注視していただければと思う。
課題制作試験
【概要】
受験者459人に対し、課題提出者は382人となった。課題合格率は、提出者ベースで70.9%であった。課題ごとの内訳は以下の表の通りである。
課題種別 | 提出数 | 合格数 | 合格率 |
---|---|---|---|
課題A(携帯電話マニュアル) | 45 | 38 | 84.4% |
課題B(DMハガキ) | 337 | 233 | 69.1% |
【B課題新出題の意図】
今期はペラ物B課題について、試験開始後初の題材変更を行った。その背景は、実際の市場においてより一般的に流通しておりかつ重要性を増す題材を取り上げようという趣旨によるものである。
DMハガキは、他メディアによって代替可能な情報伝達という役目に留まらず、他の情報媒体との物理的な差別化による開封率の向上、効果的な視線誘導を促すデザイン性などの観点から、販促展開ツールとしてより注目が集まっている。
今期はこの点を踏まえ、ペラ物題材として取り上げるとともに、DM発送に関する基本知識について学科試験で新問題として扱った。
試験課題の変更としては、制作物形態の変更であり、課題の中で課す制作要件および採点項目、基準に大きな変更はない。 しかしながら、この題材変更の背景には、ペラ物課題で想定されている顧客の販促活動における環境の変化がある。 実技試験には、課題制作の手引き(要項)に「課題の想定」という項目があり、制作の前提となる想定を示している。従来のペラ物課題「旅行チラシ」では、旅行代理店の新商品ツアーの告知チラシの制作と印刷を依頼される、という前提の制作となっている。この想定は、不特定多数に向けた商品告知チラシという前提であり、受け手を限定せず、商品であるツアーコンセプトをデザインイメージに反映するものとなる。
一方新課題「DMハガキ」では、発注元企業の顧客規模、商品戦略、ターゲット層、DM配布先選定方法および配布時期、商品戦略に応じた配布物の品質要望にいたるまでの制作与件を想定として示している。つまり新課題では、特定な関係を持った見込み顧客をマーケティングによって絞り込みアプローチする、という一連の販促活動の中での印刷物製作のかたちを示すことにより、印刷物を用いるに至るプロセスへ業務範囲の意識を向けることへの示唆をも含んでいる。
尚今後は、制作に至るプロセスの想定を様々に設定した複数の課題を出題していく可能性もある。
【不合格要因の傾向】
題材を新しくはしたものの、盛り込まれる各種デザイン要素やシリーズ設定など、制作条件が大きく変わるものではなく、また採点基準についても従来同等の項目にておこなった。しかしながら、B課題合格率は従来平均より10%ほど低い値となった。 主な不合格要因は、制作指示書の不備・減点によるもので、紙面設計や要素の詳細記述が不足しており、作品のデータ上で設定している数値項目等について指示書に記述することを怠ったものが多く見受けられた。 1つの作品データとしては問題がなくても、本試験のシリーズもの課題としては、紙面設計図に要素配置位置を数値にて明記しておくことを必須としている。また、紙面設計意図なしに作品上でなりゆき配置したものの数値を読み取って後から設計図に記入したことが明らかであるような無計画な指示書は、大きな減点となることがある。
【合格者優秀作品の評価ポイント】
採点6項目中いくつかの項目で満点とされた提出物では、以下のような点がプラス評価に働いた。
- 制作指示書の統一事項と自由裁量の指示において、統一指示により確定しなければならない箇所とそうでない箇所の区分けを明確にしたうえで、作業者に明瞭に指示している。 (シリーズによって原稿量が増減する箇所と固定の箇所を区別、固定箇所についての配置を数値指定したうえで、増減対応を弾力的に運用できるような指示をしている。)また、その区分けを表組、色分けで示すなど一目瞭然な表現で示している。
- 紙面設計全体像で示すべきことと、各パーツ詳細指定で示すべきことが明確で混乱がない。
- 制作指示書において、配布ターゲットとターゲットに応じたデザインコンセプトを打ち出している。また、作品上でもそのコンセプトがレイアウト、色使い、文字組などの基本事項に破たんなく実践されている。
(採点コメントより)
2015.11.4 DTPエキスパート認証委員会
文責:JAGAT資格制度事務局 丹羽 朋子
【次期試験日程】
次回第45期試験は、2016年3月20日(日) 東京・大阪・名古屋・福岡および全国指定講座会場にて実施予定である。
第45期DTPエキスパート認証試験実施要項