DTPエキスパート人物像と第45期試験出題内容振り返り
2016年3月20日(日)に実施した第45期DTPエキスパート認証試験の結果が確定した。
これからの印刷メディアビジネスを担う人材像と出題内容を振り返る。
筆記試験
カリキュラム第11版に基づき、「DTP概論」「色」「印刷技術」「情報システム」「コミュニケーション」の各カテゴリーにおいて各々正答率80%以上を合格基準として出題設定した。
今期は、下記項目を新出題項目として設定し、関連知識を問う出題を行った。
- マーケティングと印刷物の連携
- DTPに関する常識の再確認(レイアウトデザイン/洋装本/外字事情/画像の貼りこみとRIPの設定/RGB画像の扱い)
- 知的財産権に関する知識
- IoTと印刷
【マーケティングと印刷物の連携】
印刷物の需要を喚起するヒントを探り、また、市場創造の全体像を学んでもらう意図で出題された。マーケティングとは、顧客の潜在的要望、自覚していない価値に対する満足感を引き出す導線を設計するデザインであるともいえる。未来の市場にフォーカスした導線の中で、印刷物が果たす役割を見出すことができる。
さらには、マーケティング手法に関する知識を蓄えることで、コミュニケーションの効果を高め、印刷ビジネスの領域を再発見する可能性もある。
今後の印刷ビジネスを担う人材には、印刷需要を作り出すしかけに目を向けることが求められる。
【DTPに関する常識の再確認】
印刷業界の業務範囲の拡大は、川上といわれる印刷需要を生み出すプロセスに関わること、また川下といわれる印刷物製造後の物流方面への展開が行われている。いわゆる異業種参入に近い状況になるわけで、参入障壁を上回るだけの強みが求められる。
こういった従来の守備範囲を超えた取り組みに際して、印刷物製作実績の蓄積を強みとしていくにあたり、画像データ形式や外字事情をはじめとした常識の再確認をしたうえで臨みたい。
【知的財産権に関する知識】
Webをはじめとする電子媒体においてはあらゆるコンテンツへの接触機会が増大しているため、安易な利用により様々な権利問題に発展しかねない状況がある。紙媒体製作時にも基本知識が求められていた点であるが、さらに慎重に取り扱う必要性があり、出題にいたった。
知的財産権に関しては、先ごろ環太平洋パートナーシップ(TPP)協定において、著作権保護期間を50年から70年へ延長する案を盛り込む内容で妥結したことなども話題となった。
課題制作試験
【概要】
受験者239人に対し、課題提出者は190人となった。課題合格率は、提出者ベースで70.5%であった。課題ごとの内訳は以下の通りである。
課題A(携帯電話マニュアル)……26件
課題B(旅行チラシ)……164件
旅行チラシのテーマは、「世界のマリンリゾートシリーズ」で、「ニューカレドニア」のチラシを制作するという課題設定であった。
アイキャッチ画像の背景に広がるオセアニアの海を象徴するエメラルドグリーンの印象が強く、アイキャッチと自然に調和するベースカラーを使用した作品は、ターゲットの心を惹きつける。旅先は「プチ・フランスの雰囲気をもつ異国情緒あふれるリゾート観光地」であり、設定されている見どころやオプショナルツアーのいずれもからある統一した印象を導き出しやすい課題である。逆にこのテーマに対し、ポップな書体選定やヴィヴィッドな多配色を施した作品には違和感を覚える人も多い。支給テキストの中に表れるクライアントの商品コンセプトや演出意図を読み取ってビジュアライズした作品は、加点につながりやすかった。
シリーズを通したテキストの増減対応として、テキストの配置個所に余分にアキをとっておく、という対応をしてしまい、作品単体としてみたときに意図しない無駄な余白が目立つというものが何件か見られた。テンプレートとしてテキスト配置枠を設定する場合、項目数やテキスト量に応じてどのような原則で無理のない配置をするかを考慮しているか否かが「要素」項目の加点減点に現れる結果となった。
DTPエキスパート認証委員会
文責:JAGAT 資格制度事務局 丹羽 朋子
<試験情報>
第46期DTPエキスパート認証試験
開催日:2016年8月21日(日)
開催地:東京・大阪・名古屋・福岡・仙台・札幌・新潟会場および指定講座会場にて実施予定
申請受付期間:2016年6月20日(月)~7月20日(水)※個人Web申請のみ~7月27日(水)まで受付
第46期DTPエキスパート模擬試験+解説講座 7/2(土)東京・大阪 同時開催