ネットメディアはどこに行くのか

掲載日:2017年4月6日

モバイルシフトによって生活者のメディア接触状況は大きく変化し、ネットメディアのあり方やビジネスにも変化が生じている。

■モバイルシフトから次のステージへ?

2016年度最後の印刷総合研究会クロスメディア部会の定例ミーティング「生活者変化とネットメディア成功の秘訣」では、博報堂DYメディアパートナーズ、東洋経済オンライン、C Channelから3名の講師が登壇した。いつもとは違い、レジュメの配布はなく、投影スクリーンの撮影も制限された。それは、個人情報や著作権に配慮したもので、セミナー参加者だけが得られる貴重な情報もあった。

博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所「メディア定点調査2016」によると総メディア接触時間は増えており、PCが減少し、スマホヤタブレットが増えている。20代、30代になるとスマホ接触が大きく、特に就寝前に一番多くの時間接触している。

大学生の自室にカメラを設置して、就寝前モバイル行動に密着した実証実験の映像は当事者にとっても意外なものだったという。19歳女性は就寝前の2時間39分を、料理やヘアメイクなどの動画を検索しながら、スマホを一度も横にすることなく動画を次から次と見続け、LINEに即返信しながら、TwitterやInstagramも確認していた。20歳男性にいたっては、iPhone6、iPad、46型全録テレビのトリプルスクリーンで、ドラマや映画を見ながら、3時間ほどSNSと野球ゲームに興じていた。

このようなメディア行動を、動画もSNSも次から次へ見続けるChain Viewing(切れ目ない視聴)、すべて“従”で“主”がないSimul Viewing(同時視聴)と名付け、その行動への自問や漠然とした疑問の芽生えから、モバイルシフトから次のステージへの移行の兆しと分析していた。

■東洋経済オンラインの戦略

国内ビジネス情報サイトNo.1の東洋経済オンラインは、月間PV2億、2000万人を超える読者をもつ。「独自取材した経済関連記事」を強調しており、閲覧するためのID登録は不要で、全記事を無料で公開している。有料版を作り読者から課金するモデルも考えられるが、読者に読まれることに重点をおき、より多くの広告出稿と広告単価を上げていけるようにしたいという。

読者は20代~40代、編集部の女性比率が過半数を超えていることもあってか、女性読者をターゲットにしたコンテンツが多く、読者の4割を女性が占めている。今後とも男性も女性も読むサイトにしていきたいという。また、読者の平均年齢は、紙媒体は毎年1歳高くなっていく傾向にあるが、オンラインは若返っていくのが大きな差だという。

東洋経済オンラインが「本店」だとしたら、ヤフーニュースが「OEM」で、グーグルやアップル、Facebookは「支店」に当たるという表現をした。読者はどこからも読むことができるが、配信先のヤフーで見られている記事の場合は広告収入はなく、支店なら広告収入を得ることができる。本店のトップページはステータスが重要で、広告主に安心感を与えるものとしている。 

同社発行の書籍の黒字に東洋経済オンラインも貢献している。またセミナー事業も順調に推移しているので、今後は有料メルマガやと有料セミナーでビジネスを拡大していくという。

■1分間の動画メディア「C CHANNEL」

「女性の「知りたい」を1分で解決する」がキャッチフレーズの「C CAHNNEL」は、日本最大規模の女性向け動画ライフスタイルメディアである。カテゴリ別に様々なジャンルのHow to動画を掲載している。特に料理をテーマにした動画を制作してから再生回数が急激に伸び、2017年2月には6億6000万回の再生回数を達成した。

クリッパーといわれる人気投稿者(雑誌やメディアで活躍する人気モデルやタレント)が10代、20代の女性向けに1分間の動画を撮影・制作し、投稿している。彼女たちインフルエンサーが、C CHANNELの「公式クリッパー」として動画を紹介、SNSで強い拡散力を発揮する。Webやアプリだけでなく各SNSからも情報発信し、情報を幅広くリーチする 分散型メディアである。また、モバイルファーストな縦型動画なのでわざわざスマホを横にする必要もない。

広告収益モデルだが、リアルイベントなども開催し、先日もオフラインイベント「SUPER C CHANNEL」を東京・有楽町の国際フォーラムで開催され盛況であった。

「C CHANNELは映像でコミュニケーションする時代を作ります。時代が変わりコミュニケーションのあり方が変わる中、何がコミュニケーションを生み出すコンテンツなのかが問われる時代になっている」という。

JAGATでは、pageカンファレンスや印刷総合研究会などで、メディアの未来像を大きなテーマとして取り上げてきた。今後も追いかけていきたいと思っているのでご期待いただきたい。

(JAGAT 研究調査部 上野寿)