DTPエキスパート四半世紀・・・資格制度事務局奮戦記(2)
JAGATは創立50周年となり、DTPエキスパートも「カリキュラム(初版)」を発行してから間もなく四半世紀を迎える。試験開始からの約10年は拡大する受験者に対応すべく東奔西走(正直に言えばドタバタ)の日々であったが、事務局奮戦記その2である。今回は更新試験を取り上げ、やはり微妙な事柄も含まれるが、すでに時効ということで・・・。
◆更新試験にまつわる騒動あれこれ
変化するDTP環境やビジネスに対応すべく「DTPエキスパートカリキュラム」は1993年の初版発行から2年ごとに改訂し続け、最新版は2016年11月発行の第12版である。DTPエキスパート資格もそれに呼応して2年ごとに更新試験を義務付けている。ビジネス資格である以上その現場から乖離することのないよう、常に知識、情報をアップデートするための言わば“勉強し続ける仕組み”を提供し、有資格者として現役を維持していただくことが目的である。
2017年春の47期本試験では217名が受験したが、同期の更新試験では7倍以上の1588人が受験しており、更新率は20年を経た現在でも80%以上の高率を維持している。DTPエキスパートを教育制度、人事制度に採用している企業が多いこともあるが、基本的に皆さん勉強熱心であることに頭が下がる思いである。
現在の更新試験はCBT(Computer Based Testing)方式であるが、以前は紙に印刷した試験問題を本試験日の翌日(月曜日)に自宅あて発送していた。当時は締切が2週間後で、忙しい中を少しでも土日を有効に活用していただこうと配慮して、ある期で問題発送をそれまでより早め、本試験前の金曜日に発送したが、これがとんでもない失敗であった。
更新試験の問題は、本試験で毎期加わる新問題を中心に構成している。つまり自身が取得した期以降に加わった新問題に取り組む事によって、新たな知識を習得するという目的にかなうものとなる。したがって更新試験問題には当期の本試験の新問題も出題されている。これが土曜日に自宅に配達されたところ、その有資格者の奥さまが翌日曜日の本試験の受験者であったのだ。
たまたまその方がエキスパート認証委員の同僚であったため、事態を察知して奥さまに問題を見せることなく事務局に報告いただき、問題の事前漏えいという事態は避けられたが、他にも同じケースがなかったとは言い切れず冷や汗をかいた。
配慮はできたが考慮が足りなかったと反省しきりである。
次回からは、更新問題は必ず本試験翌日に発送し、締切を3週間に延長した。(現在はCBTで結果がすぐに判定できるため更新試験期間は約1か月)
更新試験の受験者も増え続け、2004年8月期でついに2000人を超えるところまできた。
ある期の試験で「試験問題が届かない」という問い合わせが殺到したことがあった。これまでも数日到着が遅れたり、住所の変更や記載ミスで戻ってきたこともまれにあったが、これほどひっきりなしに未着の問い合わせが来るのは異常である。
問題の封入と発送は長年JAGATと取引があり信頼している外部に委託していたが、問い合わせると、発送代行業者の社長さんが少しでも発送コストを節約してくれようと気を遣い(頼んでもいないのだが・・・)某運送会社のS●M●便で手配していたことが判明した。このM●便はボリュームディスカントで送料を安く抑える仕組みで、何万通集まらないと配達しないのである。そのため地域によっては到着が1週間以上遅れる事態が発生していたのだ。
もちろん配送が遅れた受験者には締切延長で対応したが「何で大事な問題をM●便なんかで送るんだ!」をはじめ、1週間怒られっぱなしであった。人生であれほど大勢の方に謝り続けたことはそれ以前も以後にもない。
再びその頃、これまもまたご夫婦の話。
更新試験解答を回収し終え採点も終了した。ちなみに合格率は通期の平均でも95%である。結果通知を発送してホッとしたところ問い合わせの電話が事務局に入った。ご夫婦で同時に更新試験を受け、旦那さんは合格したが奥さまが不合格だったと言う。
言いにくそうではあったが「実はお互いに答え合わせをやったので一人だけ落ちるのは納得がいかない」とおっしゃる。
事務局奮戦記その1にも書いたが、合否は厳正な採点結果をお返しすることがすべてであり、結果の問い合わせにいちいち確認したり調べなおしたりして応対するようであればむしろ不信感を招くであろう。しかし、答え合わせをしたと主張なさるのでまさかマークシートの読み取りミスでは?と、恐る恐るお二人の解答用紙を引っ張り出し比べてみた。なるほど確かに全く同じ個所をマークしている。と、解答用紙を裏返ししたところ事態が判明した。解答用紙は表裏で全部で360問まで対応できる仕様にしており、当時の問題数は200問以上であったので、マークすべき個所は裏面に及ぶのだが、奥さまの解答用紙は裏面が白紙であったのだ。やれやれである。
冒頭に書いたように更新試験は、知識、情報のアップデートが目的である。したがってJAGATとしてはWebや書物で調べて解答しても問題はなく、人に教わっても(文字通り教わるという意味で)良しとしている。答え合わせをしても良いが丸写しはだめだということだ。そして最後は受験者のモラルに任せるしかないと考える。
現役でビジネスに活かしていただくための更新試験を、定年を過ぎてすでに仕事から離れてしまった方が受験されたケースがあった。どう考えても資格は不要であろうと思われたが、後のアンケートでその方は更新理由に一言「ボケ防止」と記入されていた。うーん素晴らしい!(つづく)
(CS部 橋本 和弥)