営業分野で見直されるDTPエキスパート

掲載日:2017年9月22日
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近年のDTPエキスパート認証試験の受験者は、約半数がDTP制作・プリプレス関連部門であるが、営業関連部門も3割以上となっている。

バランスの取れた印刷知識とは

DTPエキスパート認証試験は、マークシート方式の学科試験と、DTPデータと制作指示書を作成する実技試験から構成されている。

学科試験は、上流から下流まで、またDTPだけではなく、オフセット印刷やデジタル印刷、色、コンピュータ知識について万遍なく理解していなければ、合格することができない。
エキスパートの勉強に取り組んで、初めて文字組版や色彩論、カラーマネジメントを理解する人も多いのである。

したがって、勉強して苦手分野を克服したエキスパートは、全工程の知識をバランス良く身に付けた印刷人だと胸を張ることができる。
2万人を超えるこれまでの多くのDTPエキスパート取得者の方々は、印刷の共通言語を修得したと言い換えることもできる。

実技試験では、InDesign、Photoshop、Illustratorなどのアプリケーションを自分で操作してデータを完成させ、さらに制作指示書(グループ制作を想定して、的確に作業を指示するためのドキュメント)を提出しなければならない。

日常的に制作業務に携わっている受験者であれば、実技試験は業務の延長で取り組める。一方、営業部門の受験者にとって、かなりハードルが高いことは事実である。

しかし、営業担当者がDTP・印刷の知識を修得し、自分で考えて課題データや制作指示書の制作を経験することは、たいへん大きな価値がある。

社内の制作工程が適切に進行しているかどうか、自分自身で判断する能力を身に付けることができる。さらに、先読み(危険予知)をして、連絡ミスやチェック漏れによる事故を事前に防ぐことができる。

体系的な理解を深める

新入社員研修でDTP実習や印刷実習を課す印刷企業は、少なくない。しかし、ほとんどは1~2日程度ではないだろうか。体験することの意味は小さくないが、体系的な知識や判断力を修得することは困難である。

例えば、印刷物制作で付加されるトンボは、何のために必要で、なぜあの形になっているのか、印刷工程の全体像が見えていなければ、簡単には理解できないだろう。
また、RGBデータとCMYK、カラーマネジメント、PDF入稿などの知識は、営業の日常業務と密接な関連がある。
デジタル印刷では、オフセットではできない在庫レスソリューションを提供し、顧客の課題を解決することが求められている。

印刷業務に関わる専門家、つまり印刷人であれば、営業担当であろうと制作担当であろうと、DTPや印刷工程の体系的な理解や専門的な知識は必要なのである。

ブランディング効果も発揮

印刷企業の一部には、入社2~3年目までの間にDTPエキスパート試験の合格を推奨している例もある。
そのために、JAGATの通信講座受講や外部講師による対策講座、社内勉強会(自発的な集まり)など、各社さまざまな形で支援していると聞く。制作部門ではなく、営業部門に限って実施している例もあった。
専門知識や実技を、体系的に理解・修得することは若手社員にとっても意義深いだろう。

社内に多数のDTPエキスパートを有することは、顧客に対してのブランディング効果も絶大である。

ある印刷工場では、保有資格の掲示コーナーを作り、資格別に社員の顔写真入りパネルを掲示している。専門的な知識を修得した社員が何人も在籍していることが一目で分り、工場見学や立会いに来た顧客にとって、信頼感が上がるのは明らかである。

また、営業担当者のほとんどがDTPエキスパート取得者であれば、専門スキルの高い社員が多いということで顧客に対するインパクトは大きく、他社との差別化となるだろう。

(JAGAT CS部 千葉 弘幸)