実務に役立つDTPエキスパート知識

掲載日:2017年10月20日
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ー 第48期DTPエキスパート認証試験 出題傾向 ー

2017年8月27日、全国6カ所のJAGAT会場と指定講座2会場にて第48期DTPエキスパート認証試験を実施した。本稿ではその出題傾向について解説する。

PDF/X-4採用の経緯

今回の試験より、新たな実技課題の提出形式としてPDF/X-4を採用した。

1994年の試験創設以来、課題の提出はプリンター出力物を事務局あてに郵送することとしていた。採点作業も、関係者が事務局に集合しておこなっていた。この時代であれば、他の方法は考えられなかったのである。

2009年8月より、印刷データ(PDF/X1-a)をサーバーにアップロードする方式に変更した。印刷業界におけるネット活用は既に十分に進んでいたが、入稿形式はアプリケーションデータということも多かった。この頃になって、ようやくPDF入稿が普及したことを反映した。

そして今回、RIP環境の変化に伴い、PDF/X-4を採用した。このようにDTPエキスパート認証試験では、課題の提出においても印刷の実務を反映することに努めている。

■DTP最新事情を反映した実践問題

DTPエキスパート試験は、毎回10~20%程度の問題入れ替えをおこなっている。DTP技術やPC環境の進化のスピードが早いためであり、2年間の期限付きとした根拠ともなっている。
以下に今回の新項目について解説する。

(1)トンボの必要性の有無と注意事項
PDFワークフローの普及に伴い、トンボの意義も変わってきている。DTPアプリケーションを正しく扱うことで、トンボが不要な場合も増えている。トンボ・データと後工程での扱いを理解しているかを問うている。

(2)端物と多ページ物のレイアウト
InDesignにはマスターページなど多ページ物をレイアウトする際に有用な機能があり、これらを理解しているかどうかを出題している。端物のレイアウトでは、Illustratorを使用することも多く、その基本機能についての知識を問うている。

(3)カラープロファイルの進展
印刷分野では、JapanColorの利用が一般的なってきており、カラーマネジメントが普及してきた。しかし、Web制作分野ではカラーに関する意識が十分でないことも多い。Web制作におけるカラープロファイルの利用法や動向に関する知識を出題している。

(4)Bridgeの意義とコンタクトシートの利用法
Bridgeは、Adobe Creative Cloudに含まれているファイル管理・閲覧ソフトである。膨大な数の画像データを管理するスマートコレクション機能やサムネール画像を一覧表示するコンタクトシート機能についての知識を問うている。

(5)テクニカルイラストレーション
初めて取り上げた分野の出題である。近年ではCADデータからテクニカルイラストレーションを生成する方法も普及している。立体物を二次元で表現する製図法の基本として、軸測投影法などの知識を出題している。

(6)ウィルスとセキュリティ対策
ネットワーク社会が進展し、スマートフォンも普及している。その一方で、大企業の情報システムから個人のPCユーザーに到るまでさまざまなレベルでセキュリティ対策が重要となっており、その知識を問うている。

(7)デザインレイアウトの評価
企画デザインとAIDMA、AISASなどの消費行動モデルとの関係、情報分類法であるLATCHの法則との関連の知識を問うている。

(8)配色の原則
グラフィックデザインの基本的な知識として、配色がもたらす影響やSD法(意味差判別法)による配色評価についての出題である。

■実務に役立つDTPエキスパート知識

DTPエキスパートの出題は常に最新の事情を反映している。
かつては写植・版下、アナログ写真、製版スキャナやフィルム製版、平台校正に関する出題もあったが、現在ではデジタル方式に継承されているものを除いて出題していない。
OS やPC導入、サーバー・ネットワーク構築などの出題も様変わりしている。

その時代に応じて、実務に役立つ問題を出題しており、それを学ぶことで結果的に印刷人に相応しい知識を修得することが出来るものとなっている。

(JAGAT CS部 千葉 弘幸)