DTPエキスパートのススメ

掲載日:2018年6月20日
このエントリーをはてなブックマークに追加

DTPエキスパート試験は、次回の試験日2018年8月26日で記念すべき50回目を迎える。自分で言うのも何だが、日本のDTP発展のためにDTPエキスパート試験は大きな功績を残したと思っている。そして今後のデジタル化にも役立っていこうと鋭意思案中である。

昔話はなるべく言いたくないのだが、日本のDTP創世記は欧米の技術(特に米国)をマルッと直輸入しているため、今から考えると笑ってしまうようなことが、まことしやかに信じられていた。例えばカラー印刷は、紙の伸び縮み等によって見当がずれるために、逃げ処理(かぶせ処理)して、ずれた時にも白地が出ないようにとするのが基本とされていた。

欧米では日本より見当性が悪かったために、逃げ処理量(トラッピング量と呼んでいた)を0.3mmにしていたのだ。しかし見当性の良い日本では0.1mmで十分であり、0.3mmでは太い裏ケイになってしまう。エキスパート試験ではこんなことから日本のDTP常識を確立していき、総インキ量やUSM量、等々についても常識化していった。

最近のDTP現場について、心配している印刷関係者は少なくない。特に若いDTPオペレーターのDTP知識、印刷知識、印刷関連のマーケティング知識ときたら目を覆いたくなる状況だ。

DTPエキスパート試験の受験者の推移を見ていくと、メーカーの人間が「製品を売るのに理論武装が必要だ」ということで、DTPエキスパート試験を取ることで、必要不可欠な知識を覚える最短距離としてDTPエキスパート認証試験を利用していた。これに関しては十分目的を達することができて、次に印刷会社のDTP関係者、そして印刷営業へと広がっていった経緯がある。

しかし、私とそう変わらない人間がエキスパート資格を取っていたので、現在はリタイア時期に重なって、新陳代謝が必要になっている。メーカーがまさしくこの時期にあり、メーカーの新世代が受験しようとしているのだ。

そして印刷会社の今のDTP状況を見ていると、最低限DTPエキスパート合格の知識レベルを持ってさえいれば、どんなにマシだろうか!ということができる。日本の印刷文化レベルの維持のためにも、若い世代にDTPエキスパート試験に挑戦してもらいたいと強く願っている。

またDTP関連の新技術として、PDF/X-4や透明効果、わかっているようで誤解していることが多い描画モード(十中八九は誤解している)、今後の標準になるΔE2000、JapanColor2011、印刷前の表面処理(コロナ放電)や表面加工等、新問題をどんどん充実しているところである。これで勉強しただけでもどんなにインプルーブするか?!大きな差になってくるはずだ。

経営者の方にお願いだ。日本の印刷レベル維持のためにも、若い世代にDTPエキスパート受験を促進させて、頓珍漢なトラブルをゼロにしていきたいというのが、今日のお願いである。

(JAGAT専務理事 郡司秀明)