コミュニケーションを促進する情報デザイン

掲載日:2024年9月19日
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DTPエキスパート・マイスター実技試験を包括的に解説した待望の書籍『DTPエキスパート・マイスターBOOK』を9月30日に発刊します。

DTP エキスパート・マイスターの実技試験では、架空の与件をもとに制作コンセプトを立て、支給素材を使用して印刷物のデザインレイアウトを行う。

この試験で求められるのは、印刷物の使用目的を踏まえたうえで効果をもたらすデザインを行うことと、印刷に適したデータ制作を行うことである。一連のデザインプロセスは、印刷物がエンドユーザーに何をどのように伝えていくのか、つまり情報の発信者とエンドユーザーとの印刷物を介したコミュニケーションを促進するために検討すべき項目とその具現化が中心となる。

マイスターの実技試験は、課題への取り組みを通じてこれらのプロセスを体感できるように問題設定されている。以下では、DTP エキスパートカリキュラムと今年9 月発行予定の実技試験解説書(編著:樋口泰行氏)の内容を引用しつつ、試験の概要をお伝えしたい。

デザインプロセスと実技試験で問われるポイント

①デザイン計画
実技試験では与件として、「印刷物の制作目的」「使用場面」「ターゲット属性」「発注者からの要求事項」などが示される。これらの情報から印刷物で達成したいゴールを設定し、それに向けた全体像を構想する。

②デザイン情報の収集と整理・分析
雑誌の企画ページを作る課題であれば、想定する読者層に対してどのようなデザインアプローチが効果的かなど、周辺情報を収集していく必要がある。問題作成委員の樋口氏はこの作業を「目的地の情報を全く調べず、旅行に出かける人がほとんどいないのと同じように、デザインを行う際にも、ターゲットの好みや行動パターンを理解してデザインするためまずその分野を調べることが必要」として、多様なデザイン情報の収集の方法を解説している。

③ペルソナ・シナリオと目標の設定
実技試験では、ユーザーターゲットの属性などが示される。デザインを具現化していくためには、ユーザーのペルソナを想定し、「どのような場面でこの印刷物を使用するのか?」まで考えを深めるとクオリティーがより高まる。例えば雑誌の企画ページにおいては、どのようなペルソナに向けた記事なのかをライターとデザイナーが共有することで、訴求力を高めることが期待される。

④コンセプトの検討と視覚化
デザインレイアウトの具体像を描くため、ラフスケッチなどによりコンセプトを形にしていく作業が必要となる。樋口氏は、この段階ではラフスケッチをあえて手書きで行いながら、デザインを固めていくことを推奨している。実技試験解説書では、課題をもとにどのようにラフスケッチを行い、構想を具現化していくべきなのかがサンプルと共に豊富に掲載されており、デザインプロセスを体感することができる。

⑤詳細デザイン仕様
版面や段組みの設計、文字スタイルの詳細や図版の位置など、レイアウトに必要な各種要素を詰めていく段階となる。適切な数値指定やスタイルの一貫性などは視覚効果として重要であるだけでなく、制作者間の共通認識を確かにし、より安全で確実なデータ制作にもつながる。

デザインによるコミュニケーションの実現に向けては、デザイン制作を行った後の評価とフィードバックも重要である。実技試験ではその効果までを具体的に図ることはできないが、制作コンセプト書では「どのような効果をゴールとしてデザインしているのか」をしっかりと踏まえた記述が望ましい。

Jagat Info 2024年9月号より一部抜粋

『DTPエキスパート・マイスターBOOK』9月30日発刊 予約受付中

印刷物デザイン制作工程の川上から川下まで、多岐にわたる制作実務の全体像を把握することができる書籍を発刊します。マイスター実技試験受験予定者はもちろん、印刷物デザイン制作にこれから携わる方、DTPオペレーターやWebデザイナーの方などにも最適な一冊です。