DTPエキスパートカリキュラムを読んでみよう
DTPエキスパートカリキュラム第13版は2018年11月に発表された。DTPや印刷の技術だけでなく、現在の印刷を取り巻く環境や印刷ビジネスに求められる要素、今後の方向性などを理解することができる。
印刷工程におけるデジタル化の進展
日本でDTPの導入が始まったのは1990年代の前半だが、実際の印刷現場の多くは従来同様に写植・版下が使用されていた。写植・版下が少なくなり、DTPが広く普及したのは2000年代の半ば頃と言える。
CTPは2000年頃を境に急速に導入が進み、普及した。フィルムという中間生成物と刷版工程が無くなるため、コストダウンや品質向上の効果が明白だったからだろう。
デジタルカメラが出版・印刷のプロ用として使用され、デジタルデータ入稿が一般的になったのは、やはり2000年代の半ば頃である。
この20数年の間に印刷工程はアナログからデジタル方式へと、大きな変革を遂げてきたことになる。
DTPエキスパート試験は、DTPを推進する人材を育成するために、JAGATが1994年に始めたものである。その当時の印刷業界では、文字組版と色・画像の両方に精通した人材は本当に少なかった。
さらに、多くのデザイナーはレイアウト指定紙を作成することが仕事であり、印刷工程を詳しく知っていることも少なかった。また、PCを扱うことにも大多数が不慣れだった時代である。
印刷ビジネスのエッセンスが集約されたカリキュラム
試験制度を始める際に、JAGATが最初に取り組んだのはカリキュラム作成である。DTPエキスパートとして必要な知識とは何か、さまざまな分野の専門家と議論を行い、体系化したものがカリキュラムとなった。
文字組版や色・画像の知識だけでなく、企画・デザインから印刷工程の知識、PCやネットワークの知識も体系化されている。この頃は、世の中にDTPの参考書もほとんどなかったため、解説文付きのカリキュラムとなっている。
その後、カリキュラムは2年ごとに改定を行っており、その時代の最新知識や技術が反映されている。2018年11月に発表したカリキュラム13版では、印刷ビジネスの進化に合わせ、情報デザインやマーケティング理論、デジタル印刷ビジネスなどが追加されている。
試験を受験しようとする方々は、過去の問題集や受験参考書を購入して勉強を始めるケースが多いようだ。しかし、最も参考になるのは、実はカリキュラムを熟読することである。
出題範囲やレベルが、平易、かつ簡潔に記述されており、容易に理解できるようになっている。DTPや印刷の技術的な解説だけでなく、印刷を取り巻く環境、現在の印刷ビジネスに求められる要素の全体像と今後の方向性を理解することができる。
このカリキュラムを熟読することで、エキスパート試験の出題傾向やレベルが総合的に理解できる。例えば、情報デザインやマーケティングなどの新しい分野では何が重要なのか把握することもできる。その後に、さらに細かい分野を掘り下げて勉強すると良いだろう。
DTPエキスパートカリキュラム第13版は、Webページでも全文を公開している。また、資料請求すると無料で冊子版を送付している。
エキスパート試験の受験するかどうかに関係なく、すべての印刷関係者にとって有益となるだろう。一読することをお薦めしたい。
(研究調査部 千葉 弘幸)