【資格採用企業インタビュー】経営陣自ら資格を取得し 社員の意欲を引き出す

掲載日:2019年5月29日
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新宿区西早稲田に本社を置くタクトシステム株式会社は、カタログ制作を中心に業務を展開するコンテンツ制作会社である。現在では、カタログ制作の業務改善提案や、エンドユーザーへの訴求効果を高める手段の提案など、マーケティング業務も視野に事業を展開している。
取締役の大熊 努氏は、2017年8月のクロスメディアエキスパート資格取得に続き、2018年8月にDTPエキスパート資格も取得した。経営陣自ら両資格に取り組まれた背景を含め、タクトシステムの人材育成方針等についてお話を伺った。

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大熊 努 氏
タクトシステム株式会社 取締役/経営管理本部長

貴社の事業と最近の傾向についてご紹介ください。

10 年ほど前、通信系の上場会社であるフォーバルテレコム株式会社が、当社を100%子会社化しました。私自身もフォーバルテレコムグループ出身のため、印刷業界は経験ゼロというところから始めています。もともとフォーバルグループは通信系の会社が中心であるため、グループ内での当社の位置付けは異質に感じられるかもしれませんが、顧客基盤の共通化による異業種シナジー効果を期待していました。

当社はカタログ制作が売り上げの7~8 割を占めています。ただし、カタログによる訴求効果が薄れてきている面もあり、お客様からは従来通りのカタログだけでなくさまざまな手段を提案してもらえないかという要望があります。こうした現況を踏まえ、マーケティング視点を持ったエンドユーザーとのコミュニケーションを念頭に置いた提案や、カタログ制作での業務効率改善の提案なども行っており、現在はそうした業務の比重が高まってきています。

従来事業に加え新規事業も増えていく中で、貴社では人材にどのようなことを求めていますか。

人材育成については、OJT だけでは欠落してしまうところがありますので、資格を取得して知識の欠損を埋めることを推進しています。フォーバルグループの会長(大久保 秀夫 会長)は自らも国家資格を取得するなど、グループ全体で前向きに資格取得に取り組むことを推奨してきました。

10年前の子会社化の際、フォーバルテレコムの上層部は当社でも資格取得に取り組もうと話したのですが、当時社員には資格取得に対して懐疑的な空気がありました。3年ほど前にフォーバルテレコムから現社長(梅林 保典 社長)が社長に就任後、あらためて資格取得を推進していこうという機運が本格化しました。梅林自身も資格取得については非常に積極的に取り組んでいます。

トップダウンで資格取得を推進するのは難しい側面があると思いますが、資格取得の機運が高まった要因は何ですか。

グループ内の会社で積極的に取り組んでいるため、当社でもやらざるを得ないという雰囲気になってきました。外圧の影響というのでしょうか。当初社員は嫌々取り組んでいる感もありましたが、そのうち積極的に取り組む人間が出てきました。会社の推奨資格は幾つかあるのですが、その中で比較的やさしい資格から取り掛かっていき、最終的には当社の核であるDTP 制作に最も近い資格であるDTP エキスパートを筆頭に取得してほしいという方針を掲げ、3年近くが経過したところです。現在では、資格取得を盛り上げていこうという声が社員の中から立ち上がってくるようになりま した。

貴社のウェブサイトには、取得資格の一覧など詳しく掲載されていますね。

ウェブサイトで掲載もしていますが、さらに資格取得を推進する中で、毎月一回資格取得者を掲載した社内通達を出し、全社員に対し閲覧を必須としています。会社推奨資格のうち、新たに資格に合格した社員の情報と、これまでの取得者、累計合格者の一覧をまとめたものです。当社の推奨資格には3 段階あり、推奨資格、昇格要件資格、一時金支給対象資格、というものがあります。エキスパート認証資格はその全ての対象となる資格に位置付けています。これを定期的に社員の目に触れるようにし、各自の取り組み意欲を刺激しようというのが目的です。

費用面の会社からのサポートとしては、全ての推奨資格について、合格の場合受験料を負担し、また一時金対象資格については、資格ごとに規定を決めて一時金を支給しています。

資格取得に対して社内を盛り上げる雰囲気づくりでご苦労された点、工夫された点はありますか。

今、中心的に取り組んでいるのは若い層なのですが、マネージャー層にはまだ資格取得に対するアレルギーがあるようです。これを解消するには、まずは経営陣である私自身が会社推奨資格をすべて取得したうえで、こういうメリットがあるということを話していこうと思い、今回もDTPエキスパートに取り組みました。

実際に取得してみると、この資格の必要性を実感しました。オペレーターや制作業務者向けに最適といわれている資格かもしれませんが、私が取り組んでみて感じたのは、営業部門や生産管理部門などが取得するとむしろ良いのではないかという点です。体系的な知識が身に付くため、トラブルがあったときなどの知識の拠りどころになります。今後そういう方向で勧めていこうと思っているところです。

資格を推進することで、社外からの反響はありますか。

弊社CMB(クロスメディアビジネス)事業部門に、クロスメディアエキスパートを取得した者がいるのですが、その者が中心となり営業とタッグを組んで、資格で得た知識をベースにして弊社のマーケティングを積極的に行っています。クロスメディアからスタートしまして、GAIQ(Google アナリティクス個人認定資格)で得たスキルなども含めて弊社のマーケティングを行ったところ、その成果が表れてきているのです。今まで新規開拓が思うように進まなかったのですが、ウェブやマーケティングオートメーションなども絡めて取り組んだところ、今まで弊社が相手にしていただけなかったお客様からお問い合わせが来るようになりました。資格取得推進が営業面、顧客開拓に結び付いたという実感があります。

会社として資格に取り組むメリットはどのような点ですか。

資格で得た知識が業務に直接生かせるという点が最も大きいと思います。

私は、学生の頃に公認会計士の勉強をしたことがありました。資格に向けた勉強の中で得た知識が30年たった今の業務に非常に有効に生きていると感じています。ですから、この業界での大型資格と言えるDTPエキスパートを勉強することで得た知識やツールの使い方などのスキルは、業務に大きく生かされてくると思います。そうした勉強とは確実に身になるものなのだ、ということを社内で伝えて啓蒙していき、社員をやる気にさせていきたいと思っています。

人材の成長を促すプロセスとして、資格以外に取り組まれていることはありますか。

基本的に外部のさまざまな研修を受けさせています。DTP に関するものはもちろん、またDTP の周辺領域として、最近ではRPA など、印刷だけではなく他の領域との接点に関わる研修にはよく参加させています。その他展示会なども含め、業務に役立つものであれば、部門長の判断もありますが、行けるときにはできるだけ参加し、成長してもらいたいと思っています。

今後、社員にはどのような人材に成長してもらいたいとお考えですか。

本来の業務に関する知識はエキスパート資格により補完するよう取得を促進していくとともに、簿記検定などにも取り組み、会社の数字も分かる社員、経営者の視点を持つ社員に育ってほしいと思っています。自分たちの業務がどれだけ会社としての成果につながっているのかという点を客観的に数字で捉えることは重要です。制作業務など目の前の作業のみを中心に行っていると数字意識を持たなくなりがちですが、会社組織ですから、会社の目線でも考えられる視点は持ちつつ成長してもらいたいと思います。

取材・まとめ JAGAT CS部 丹羽 朋子
-JAGAT info 2019年2月号より転載-