ビジネス×マンガ 活用が進む広告マンガ、採用マンガの可能性

掲載日:2020年7月2日

マンガと言えば単なる娯楽。

そんな考えはもう古くなってしまった。

書店に行けば「マンガでわかる○○」といった本がいくらでも見つかる。マンガを利用した広告は最早珍しくないし、他にも、就活生向けの企業説明や海外市場の開拓などマンガは至る所で使われている。

単に娯楽として消費するだけではなく、圧倒的に目を引き、理解しやすいツールとしてマンガは使われているのだ。ビジネスシーンでマンガを目にする機会が増えてきたと感じている人も多いのではないだろうか。今回はそんなビジネスマンガの現状や活用法について考察する。

ビジネスマンガの可能性

ビジネスマンガが増えた理由の一つに、WEBとの親和性が挙げられる。文章よりもスペースが必要なマンガは、紙面で展開した場合、物理的にかさばる点や印刷コストなどがネックになっていた。しかし、WEBであればスペースを気にせず展開できる。また、世代的にマンガを当たり前に読み、育ってきた人が増えたということもあるだろう。広告マンガの効果は大きく、ちょっとしたスペースの広告でも、マンガ表現があるというだけで目を奪われ、先が気になってクリックしてしまうということも少なくない。

では、そんなビジネスマンガはどのように作られているのだろうか。業界最大手の企業は1200人や1800人といった膨大な量の漫画家を抱えている。これは日本には商業誌や単行本を出すようなプロではないが、マンガを描けるという創作者が大量にいるからこそ生まれる莫大なリソースである。

対して広告マンガを行う企業の社員は3,40人と決して多くはない。これには、マンガ広告が通常の広告よりも手間やコスト、時間がかかり、担当者に求められるスキルも多いという面に理由があるようだ。

マンガ広告の場合、依頼主もマンガを使うのは初めての場合が多いので、有効なアプローチをレクチャーする必要がある。一方で、漫画家の方も必ずしもビジネスの専門家ではないため、その企業の特徴や商品の強みといった部分はマンガ広告企業が把握し、マンガ家をディレクションしていく必要がある。宣伝計画を立てるといったビジネスの部分から、マンガ制作に踏み込んだクリエイティブの部分まで精通している必要があるのである。

これはビジネスマンガへの新規参入が難しい理由であるが、軌道に乗っている会社であっても、登録している全てのマンガ家に仕事を割り振れている訳ではない。日本がマンガ大国であり、国民の多くがマンガ表現に親しんでいることを考えれば、成長の余地はまだまだ大きそうである。しかも、近年では日本だけではなく海外でもビジネスマンガが効果を発揮する事例が生まれつつある。海外での企業ブランド価値の向上や、採用活動においても、文章よりもマンガの方が大きな効果を生んだという例が増えている。

印刷物の価値を高めるコンテンツ

ただ安く刷るのではなく、効果を上げる印刷物が求められている印刷会社にとってビジネスマンガは一考の価値がある手法である。マンガ家の手配まで自分たちで出来れば万々歳であるが、広告マンガの企業に一度依頼してみるというのも良いだろう。

WEB上でのビジネスマンガの活用が進んだ結果、サイトの滞在時間アップやCVRの向上など、ビジネスマンガの効果が明確になっていることも追い風である。うまく交渉が進めば、チラシのサイズアップや、場合によっては冊子形態で受注できる可能性もあるだろう。印刷コストが上がっても、効果を上がるのであれば、クライアントも望むところであり、WIN-WINの関係を築ける。

JAGATでは、海外でのビジネスマンガの活用事例やマンガマーケティングの現状と展望、さらには漫画家自身が語るビジネスマンガの強みなどを取り上げた研究会を近日開催予定である。効果を上げる印刷物を生むために、コンテンツの活用法について議論を深めていく。

(JAGAT研究調査部 松永寛和)