DTPエキスパート・マイスター実技試験の変更ポイント
2段階制改定後の実技試験における「デザイン性重視」のポイントをお伝えします。
次回2020年3月15日開催の第53期試験より、学科のみの認証である「DTPエキスパート」と、学科および実技による認証である「DTPエキスパート・マイスター」という2段階制に移行する。
受験申請時にいずれの資格かを選択のうえ申請していただくが、「DTPエキスパート・マイスター」で受験申請し、学科試験のみ合格した場合は、「DTPエキスパート」認証となる。
また、「DTPエキスパート」認証取得後、あらためてマイスターを取得したい場合は、「DTPエキスパート」を更新し続けている限りいつでも実技試験のみのアップグレード試験(受験料9,000円(税込))によりマイスターを取得することができる。
実技試験はどう変わる?
「DTPエキスパート・マイスター」試験で課される実技試験については、制度改定に際して想定した人材像に即したかたちで変更を行う予定である。
従来の実技試験では、学科試験日当日に案内される実技試験要項にしたがい、「作品(印刷用データ)」および「制作指示書」が求められた。
改定後の提出物は、下記の通りとなる。
紙面データ(印刷入稿用データ)
従来実技試験の内容に加えて、印刷物制作の目的に沿ったデザイン性も考慮し制作する。
制作コンセプト書
発注者から提示される印刷物制作の背景を理解し、発注側の目的要件の把握と、目的を達成するためのデザインコンセプトを記述する。
デザインによる課題解決の重要性
印刷物による課題解決を実体化する制作人材を前提に、DTPエキスパートカリキュラム第13版では「コミュニケーション」カテゴリにおいて「マーケティング」「情報デザイン」を拡充した。
DTPエキスパート・マイスターではさらに「印刷用データ制作において高いスキルを持つとともに、印刷物活用の目的を達成するためのデザイン力を兼ね備えた人材」を想定し、実技試験においてその実践を具体的に問う方向性に沿って内容変更を行う。
情報デザインの基本として、デザインプロセスは、
- 発注者へのヒアリング(情報収集)
- 調査・問題定義・目標設定
- コンセプトの策定と視覚化
- 詳細デザイン仕様の策定と制作
といった段階を経るとされる。
実技試験では、実技試験要項にて、発注者へのヒアリング、調査・問題定義にあたる部分が制作の背景として示される。それらの情報をもとに、コンセプトの策定と視覚化、詳細デザイン仕様の策定と制作を行っていただく前提となる。
提出物のうち制作コンセプト書では、主に「コンセプトの策定と視覚化」についてA4×1ページほどの分量で記述していただき、紙面データ(印刷用データ)において「詳細デザイン仕様の策定と制作」を実践していただくと捉えていただければよいと思う。
このあたりについては、JAGATで発行している『みんなの印刷入門』の「デザイン」項目なども参考にしながら、理解を深めていただきたい。
変更のポイントとなる制作コンセプト書で求められること
制作コンセプト書では、主に下記のような項目で記述していただくことを想定している。注)
注)記述項目はあくまで一例であり、各試験で出題される制作物・題材によっても変わる場合があります。改定後試験で求められるポイントと記述分量の参考用にご覧ください。
【制作コンセプト書 記述項目例】
- 印刷物制作の目的
本印刷物によってどのような課題を解決したい・効果を得たいのかを、実技試験要項記載の制作与件より読み解き、記述する。 - 想定ターゲットと訴求ポイント
本印刷物を誰に向けて作るのかを実技試験要項記載の制作与件から想定し、想定ターゲット=情報の受け手についてどのように考慮しデザインするかのポイントについても含め、記述する。 - 目的を達成するためのデザインコンセプト
上記で読み解いた目的と想定ターゲットを踏まえ、目的達成に導くためにどのようなデザインコンセプトをとるのかについて、記述する。 - その他工夫したポイント
制作与件に合致する範囲内で工夫を加えた箇所があれば記述する。
発注者や制作者間の相互理解を深めることを念頭においた制作コンセプト書の記述が望まれる。