第54期DTPエキスパート認証試験講評
2020年8月30日全国6会場および指定講座会場にて実施したDTPエキスパート認証試験は、54回目を迎え、コロナ禍の学習需要影響を受け受験者数は対前年155%の大幅増加となった。
制度創設以来初の制度大改訂である2段階制(学科試験および実技試験合格によるマイスター認証と学科試験のみの合格によるエキスパート認証の2種類の認証方式)導入後2度目の試験開催となった。
コロナ禍、社内業務ではリモートワークが一般化し、対顧客サービスにおいてはユーザーとのタッチポイントが大きく変わるなど、企業活動に様々な影響が見られるが、人材育成においては、全般に学習需要が高まっている。
活動の自粛傾向がある中での在宅学習需要に加え、事業の在りかたそのものの変化が迫られる中で、従来の想定とは異なる知識・スキル習得への要望が表れているとも言える。
そうした状況で、2段階制により制作環境を持たない方々にも取り組みやすい試験制度となったDTPエキスパート認証試験は、企業をはじめとした活用要求の高まりを反映し、マイスター127名、エキスパート195名、アップグレード8名、合計330名が受験を申請、前年対比155.7%の大幅増加となった(前期試験コロナによる特別延期24名を含む)。
マイスターを目指すデザイン制作者層、エキスパート取得を目標に知識を拡充する営業職層
マイスター認証、エキスパート認証各々に特に受験要件は設けていないが、マイスター認証は印刷会社のデザイン制作職、エキスパート認証は業種を問わず営業職の方が取り組む傾向がある。
マイスター認証には実技制作の素養がある方が取り組むことが多くなったわけだが、マイスター申請者のほうが学科合格率も17.7%も高い(エキスパート申請者学科合格率:51.1%、マイスター申請者学科合格率:78.8%)。
実制作に臨む方は知識も疎かにしていない、あるいはマイスター試験に臨む方は特にプロ意識を高く持っているとも言える。
実技試験詳細
今期の実技制作テーマは、前期に引き続き雑誌の企画ページ見開き2ページのデザインレイアウトとなった。
デザインレイアウトにあたっての必要情報(雑誌の想定読者ターゲット、記事コンテンツの目的・編集意図、印刷仕様など)が要項に示されており、それに基づき、制作コンセプト書と印刷入稿用誌面データを作成、提出する。
制作コンセプト書は、発注者と制作者のデザインに関する認識共有、コンセプトに基づいた合理的なデータ制作の指針を示すものとして出題している。
リニューアルした実技試験への対策が取れたこともあってか、前期試験と要件は大きく変化していないものの合格率は43.3%から55.5%に上昇し、全体の水準が高まっていることがわかる。
主に不合格の要因となったのは、誌面データの[デザイン/レイアウト]項目および[画像/色]項目である。
[デザイン/レイアウト]については、大きな難点がなくともマイスターとしての水準まで対応できていないものは、減点対象となる場合がある。
例を挙げると、すべての要素を破綻なくレイアウトはしているが、アイキャッチ画像が効果的に配置されずメリハリのないもの、画像要素とキャプションがひとまとまりの情報に見えてこない無造作な配置のものなどは、減点されることがある。
また[画像/色]については、支給素材であるロゴデータのカラー設定やQRコードのデータ調整に対応できていない提出物が何件か見られた。
要項に記載されている色指定に沿って常識的なデータ調整を行うだけで、これらの減点は回避できる。これらは実業務においても気を付けたいポイントである。
その一方で、印刷入稿用誌面データの[印刷適性]項目全般に関しては減点のあった方はかなり少なく、データ制作のプロとしての立ち位置が表れている。
印刷総合知識はビジネス展開の原点
さまざまな場面で言及されている通り、新型コロナウイルスは印刷物の活用場面を従来にも増して大きく変え、印刷ビジネスにも新たな着想が必要となる。
印刷が顧客のビジネスの中でどのように活用されるかを踏まえ、相応の制作フローを計画できるかどうかが重要である。その際、印刷に関する総合的な知識が計画の土台に寄与することは間違いない。