デザイン制作のエキスパート「DTPエキスパート・マイスター」
DTPエキスパート、2段階制移行の意義
DTPエキスパート認証試験は、2020年3月の第53期試験より創設以来の大きな制度変更を行った。つまり、学科試験だけの新「DTPエキスパート」と、学科+実技試験の「DTPエキスパート・マイスター」の2段階制に移行した。
DTPは、言うまでもなくデジタルデータとして印刷物を制作する技術であり、従来のDTPエキスパートでは制作実務を重視していた。そのため、学科+実技試験の両方をクリアすることを合格の条件としていた。
しかし、近年は営業担当者や営業企画部門の方の受験も増えている。DTPエキスパートを通じて社員の教育・スキルアップを図ろうとする関係者の方々からは、「実技試験があるために受験を見送り、結果的に学習の機会を逃している」という声もある。
見方を変えると、DTPエキスパート試験は学科試験だけでもバランス良く知識を身に着け、印刷業界の共通言語を理解することができる、ということである。
そのような議論を重ね行きついた結果が、今回の「DTPエキスパート」と「DTPエキスパート・マイスター」の2段階制である。
デザイン制作のエキスパート「DTPエキスパート・マイスター」
すでに3月、8月の2回の試験を終えた。
「DTPエキスパート」の受験者数が大幅に増加(8月試験、前年同期比約150%)していることから、学科試験だけの新DTPエキスパートのニーズが小さくなかったことが伺える。
一方、「DTPエキスパート・マイスター」は従来の実技試験より、合格率が低下している。
・第54期試験:実技試験合格率(54.1%)
これは、マイスター以降に伴い、出題形式・採点方法を大きく変更したことから、やむを得ないといえる。
従来の実技試験は、「誌面データ」と「制作指示書」を提出するものであった。採点においては、印刷データとしての完成度が重視され、デザイン内容を重視しないとの不文律があった。
新たなマイスター実技試験では、「誌面データ 」と「制作コンセプト書」を提出する。与えられた課題やターゲットに応じて、どのような制作意図を持っているのかを記述すること(制作コンセプト書)、制作意図が誌面に反映されているかを審査している。
すなわち、新たな「DTPエキスパート・マイスター」は、データ制作のエキスパートであることはもちろん、デザイン制作のエキスパートでもあることを想定している。
新「DTPエキスパート」に合格された方も、DTP制作に携わられている方も、「DTPエキスパート・マイスター」の学習を通じて、デザイン制作のエキスパートとしてスキルアップすることを目指してもらいたい。
JAGAT 研究調査部 千葉弘幸
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