デザインレイアウトの要件定義
デザインレイアウトの依頼を受けたとき、発注者・制作者間で共通認識を持つべき項目とは何だろう?目的に対してブレのない成果につながる印刷物を作るために必要なスキルをエキスパート資格で学ぶ。
デザインレイアウト実作業の前に必要なこと
デザインレイアウトの発注を受けたとき、発注者にヒアリングし共通認識を持つべき項目とはなんだろうか?その内容と目的に沿って制作を進めるためには、下記項目の確認が考えられる。
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目的:どのような効果を期待するか、利用のゴール設定
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ターゲット:誰に向けたものか
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内容:どんな情報を伝えるか
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場所:どんな状況で使用するか
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時期:いつ使用するか
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値段:プロジェクト予算や費用対効果
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数量:露出量
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方法:どのメディアを使用するか
商品広告・販促物などの場合、さらに商品特性や開発の背景、ターゲットからさらに一歩踏み込んだ人物像であるペルソナの設定、情報の受け手に期待する行動や、それらに基づいた問題定義といった情報も必要となるかもしれない。
ゴール設定と前提条件を明確にしたうえで、セオリーに沿った情報の視覚化の計画を発注者・制作者間で共有していくことで、目的に対してブレのない成果につながる印刷物に近づいていくだろう。
DTPエキスパート・マイスター実技の評価基準
DTPエキスパート認証制度に2段階制*を導入し、学科試験に加えて実技試験を課す「DTPエキスパート・マイスター」には付加価値を高める実践スキルを求め、デザインレイアウトに関する技量を問う方向にシフトした。
「シフト」と表現しているのは、決してこれまでの流れを断ち新たな評価基準に生まれ変わった、ということではなく、従来試験で求めた「印刷入稿データとしての標準仕様」を踏襲したうえで、基本技能に加えて付加価値を求める意味での評価変更であるためだ。
実技試験では、前提条件を記載した「実技試験要項」をもとに、発注者・制作者間で制作方針を共有するための書面「制作コンセプト書」を記述し、支給される素材データを用いて素材データをレイアウトしていく。
「制作コンセプト書」では、
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企画記事の内容が伝わるための全体コンセプト
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訴求ポイントに誘導するためのレイアウトにおける工夫
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掲載情報に応じた組み体裁
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ターゲットや企画意図を前提とした配色
などに関する短文記述とともに、それらを踏まえた紙面設計図を記載する。
受験者は、上記要件定義を理解したうえで支給素材の視覚化を実践することになる。
体験価値を高めるデザインレイアウト
制度改定後3回目となる直近の第55期試験では、架空の月刊誌の見開き企画ページのレイアウトを出題した。20代後半から40代の女性を対象とした総合ライフスタイル月刊誌における、ミステリー小説特集が題材である。特集の中の一企画として、ミステリー小説に登場する和菓子を小説内の登場人物の台詞とともに紹介する、という記事をレイアウトする。
小説の中の和菓子にまつわる印象的なセリフを見出しとしてビジュアル素材とともに配置し、読者を小説の世界にいざなうのが目的だ。記事内容の世界観を体現するデザインレイアウトが求められる。
これまでの試験でも、家庭料理店、ブレンドワインといった個性を生かしたスモールビジネスの紹介記事が題材となっていて、いずれも取り組みに対する読者の共感を促すページを想定した。
印刷物製作には、利用目的とその成果が以前にも増して問われるようになっている。要件定義における「目的:どのような効果を期待するか」への理解とともに、ビジネスの源泉、上流工程へより近づくようなスキルシフトが期待されるところだ。
実技試験の素材を一部掲載
(JAGAT研究調査部 丹羽 朋子)
関連情報
第56期DTPエキスパート認証試験
2021年8月22日(日)開催 東京・大阪・名古屋・福岡・仙台・札幌および指定講座会場
DTPエキスパート学科・実技ポイント解説講座(オンライン開催)
2021年7月開催予定(詳細近日公開)