PDF/X-4はPDF入稿のスタンダードとなったか

掲載日:2022年2月21日
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JAGATは、1月27日、DTPエキスパート・マイスター認証制度の課題提出方式を変更し、PDF/X-4に限定することを発表した。

DTPエキスパート試験の実技課題がPDF/X-4に移行

DTPエキスパート試験は、学科(択一式)試験だけの「DTPエキスパート」と、実技課題を伴う「DTPエキスパート・マイスター」の2種類から構成されている。また、DTPエキスパート合格者が、実技課題のみのアップグレード試験に合格すると、DTPエキスパート・マイスターとして認証される2段階制となっている。

これらのうち、DTPエキスパート・マイスター、およびアップグレード試験の実技課題の提出方式が、次回の第57期試験から変更される。すなわち、従来の「PDF/X-1a、PDF/X-4のいずれか」の方式が、「PDF/X-4とすること」となる。現在の実技課題の提出状況は、既にPDF/X-4が主流となっており、大きな混乱はないと見ている。

PDF入稿、普及の推移

2000年代半ば頃まで、印刷入稿と言えばアプリケーションネイティブ、つまりQuarkXpressやAdobe Illusutrator、Adobe InDesignの保存データを入稿する方法が普及していた。戻ってきた校正刷りを発注側でチェックし、印刷会社側でデータ修正する作業フローが一般的だったためである。この場合、データ制作環境(OSやアプリケーションのバージョン、フォント環境など)が、印刷会社にも必要という制約がある。実際には、アプリケーションのバージョンやフォント環境の不整合に起因するトラブルも多発していた。

発注側で完全データのPDFを制作し、入稿するのであれば、印刷会社の環境に依存せずに出力できる。そうして、PDFワークフローが普及したのである。PDF入稿に限定した印刷通販の普及も、この傾向を後押しした。その際に利用されたのは、PDF/X-1aである。その当時、普及していたPostScript RIPのほとんどで安定した出力が可能だった。

PDF/X-4採用の背景

しかし、PDF/X-1aは、「透明効果」に未対応という問題があった。「透明効果」とは、2000年前後からAdobe IllustratorやAdobe InDesignに搭載された機能である。複数のオブジェクトを重ねた際、上のオブジェクトを透かして、下になっているオブジェクトが見える。不透明度を指定すると薄く透けて見えるなど、デザイン効果の高い機能である。文字や図形に影を付けるドロップシャドウやぼかし処理なども、この機能が使用されている。
PDF/X-1aとそれを出力するPostScript RIPでは、この機能に未対応のため、「分割統合」という前処理が必要だった。RIPに送る前に透明部分をラスタライズ(画像化)することで、出力が可能になる。ただし、この操作が複雑なため、トラブルの原因となることもあった。

PDF/X-4は、この透明効果に対応しているため、分割統合は不要となり、より信頼性の高いワークフローを実現できる。また、出力するRIPとして、APPE (Adobe PDF Print Engine)ベースのRIPが必要である。
現在では、ほとんどの印刷会社がAPPE搭載のワークフローRIPを導入しており、PDF/X-4入稿の受け入れが浸透している。

ただし、一部の印刷通販(ネット印刷)などでは、 PDF/X-1a入稿を必須としている。どちらが正解ということではなく、受け入れ体制や方針の問題と言えるだろう。

DTPエキスパート実技課題、作成上の注意

近年のAdobe InDesignやAdobe Illustrator、Adobe Acrobatなどのアプリケーションには、標準でPDF/X-4書き出しプリセットが装備されており、手軽に利用することができる。さらに、Adobe InDesignやAdobe Illustratorの関連サイト、印刷会社や印刷関連メーカーが公開しているサイトでも、PDF入稿の詳細が公開されているので、参考にすると良いだろう。

(研究調査部 千葉 弘幸)

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