【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[色]2-2 色
掲載日:2016年11月1日
2-2-1 色の混合
- 波長380~780nmにわたる光の色相感覚には、単色光の色相に比べて複合光はあざやかでない感覚が生ずる。このあざやかさの程度を、飽和度 (saturation)という。
- 人間はR(レッド)・G(グリーン)・B(ブルーバイオレット)の光の3原色のそれぞれの色光が目に入る強さの比率によってさまざまな色を認識する。
- 2色を足して白(加法混色の場合)あるいは黒(減法混色の場合)になる関係を補色の関係という。R(レッド)とC(シアン)、G(グリーン)とM(マゼンダ)、B(ブルーバイオレット)とY(イエロー)がそれにあたる。印刷における補色インキのことではない。
2-2-2 色の認識
- 色には、色感覚による色と色知覚による色がある。色感覚による色は、心理物理実験のデータに基づいて定量的に表示できる。色知覚による色は、物体からの反射光が大脳の視認中枢において判断される色であって、言語などで表現される定性的なものである。「色相」は知覚色に対応するものと考えられる。
- 光の分光エネルギー分布と色感覚による心理物理色との間には対応関係があり、分光組成によって、心理物理色は一義的に定められる。しかし、心理物理色に対応する色刺激の分光組成は、一義的には定められず多様性がある。
➢ 色の見え(color appearance)
- 色の見えは、観察者や対象物が置かれている環境や照明、発光している光の特性などによって大きく変わる。そこで色を正しく判断するには、観察環境や条件の標準化が必要となる。
- 色を正しく判断できる環境として最低限考慮すべき項目には、周囲の色、照明光の特性(分光エネルギー分布)、照度、モニターの輝度がある。
- 色によっては対象物の背景の影響を受け、対比、同化、順応などの現象が起きてしまい、正しく色を見ることができない。色を正しく評価、判断するには、周囲光は無彩色であることが望ましい。
➢ 照明光の分光特性
- 照明光の分光特性は、エネルギーの過不足がなく、分光エネルギー分布がフラットなものが望ましい。照明光の分光特性が異なると、同じ印刷物でも色の見えが変わってしまい、自発光のモニターでも色の見えが変わる。
- 例えば、モニターの観察環境において、フラットな照明下に比べ赤い照明下では赤成分が多いものは明るく見えるし、赤のエネルギーが少ない照明下では、赤い部分は暗く見える。
➢ プルキンエ現象
- プルキンエ現象は、色の見え方が変わる現象のひとつで、薄暗い時間には赤色が暗く見え、青が明るく見えるという現象である。1825年、チェコの学者であるプルキンエ氏が発見したため、この名前がついている。
- 目の網膜には、外から入る光を受け取る錐体細胞と桿体細胞と呼ばれる細胞がある。錐体は主に昼間、明るい場所で働き、逆に桿体細胞は暗い場所で主に働いて光を感じている。
- 明るい場所で働く細胞は、明るい光の下で色を識別する役割を持っているため、どのような色の光も鮮やかに見ることができるが、主に暗い場所で働く細胞は、波長の長い光は受け取ることができず、波長の比較的短い青色~青緑色に感度のピークを迎える。したがって、明るい時間に赤は目立つが、辺りが薄暗くなってくると、網膜で主に働く細胞が次第に変化するため、青に近い色がはっきりと明るく見え、赤色の光が暗く見えにくいと感じるようになると言われている。そのため、薄暗い夕方でも青の標識は比較的はっきりと見える。
➢ 心理的影響
- 人間の生理的および心理的特性によって色の見え方は影響を受ける。
1つの色の知覚は、直前の色の知覚、周囲の色の知覚の影響なども受ける。生理的・心理的影響の代表的なものに色対比、同化効果、色順応、残像がある。 - 訓練や色を観察する方法を工夫することによって、生理的・心理的要素の影響を小さくすることが可能である。知覚は脳が視覚情報を補正した結果起こるものなので、計測の値と異なる場合がある。
➢ 色彩配色
- 紙面の印象は色の選択により変わる。明度の低い色は重厚な感じを与え、また明度が高く彩度が低中度の色は軽やかな感じを与える。これにより紙面の重心が影響を受ける。
- 色はさまざまな感情を人に与える。寒色系、暖色系など、色相、明度、彩度の組み合わせにより、どのような効果が生まれるかについて非常識な配色にならないように典型的なケースは理解しておかなければならない。
- 社会的な慣習として警告マークや交通標識のように目につきやすいものがどのような配色や明度差になっているかも理解しておく。
- 印刷物の表現として、代表的な色をCMYK の網点パーセントの組み合わせに置き換えて考える能力も必要である。
2-2-3 色の表し方
色の「光としての物理量」と「心理量としての見え方」の対応関係を科学的に扱う方法があり、これがモニターの色と印刷物の色の問題の議論をする共通の土俵となることを理解する。
➢ カラースペース
- どのような方法であれ、色を表現するには3つの属性が必要になるので、三次元の空間(立体)で色を数値化したモデルが考えられた。
- 「色」をあるカラーモデルの規則に従って表示することで、意図した色を情報として正確に伝達できる。
- コンピューターのカラーモニターやスキャナー、テレビの画面などは、RGBカラーモデルを使い、光を直接コントロールして色の情報を作る。
- 印刷ではCMYK インキを1枚の紙の上に刷り重ね、各色のインキが特定波長光を吸収したり反射したりした光によって色の認識をする。
- 規格化されたカラースペースの代表はCIE表色系であるが、色相、彩度、明度という感覚をベースにしたカラースペースもある。
- 色相、彩度、明度の3属性で客観的に数値化して表す、感覚をベースにした体系にマンセル表色系、オストワルド表色系などがある。
- マンセル表色系は、色の知覚を段階分けしてHV/Cで表現するもので、光の物理量との関係付けが難しいが、人間の感覚には近いとされている。
➢ 色名法
- JIS Z 8102「物体色の色」では、系統色名と慣用色名の2つを規定している。
- 赤・橙・黄・緑・青・紫・白・黒など世界共通の色名法を基本色名といい、これに明度と彩度に関する修飾語と色みを表す修飾語をつけたものを系統色という。
- さまざまな動植物や鉱物の特有の色から付けられた色名を固有色名という。
- 普遍化し一般に使われるようになった色名を慣用色名という。
- 国ごとの歴史的文化的背景によってつけられた色名のことを伝統色名という。
➢ 慣用色名
- 古代から使われてきた色名は、情報としてあるいは意思伝達の手段としての不完全さにもかかわらず、今日でも多く用いられる。
- 特定の色を表現する名称を固有色名といい、一般に広く使われているものを慣用色名という。JISでは慣用色名として約269色が定められている。
- 慣用色名や日本の伝統色の代表的な色は、赤系や青系など色系統や、色相など属性との関係を覚えておくとよい。
- 慣用色名の由来や顔料・染料の種類などを知ることは、色再現の理解につながる。
➢ CIE表色系
- 色を光の物理量として、また人間の視覚神経刺激の心理量の問題として、科学的に扱った表色系にCIEの表色系がある。
- CIEは色や光に関する取り決めを行う国際照明委員会の略称である。CIE表色系は、当初CIEで定めた特定波長のRGB単色光の比率で色を表すRGB系であったが、負の値を含んでいたので、1931年にRGB系を線形変換したXYZ表色系に改めた。
- CIEのXYZ表色系では、与えられた色と同じ色感覚を起こさせるために混合すべき3原色の刺激の量X、Y、Z(3刺激値)で表す。Yは明度曲線と同一であるので、輝度を示す。XYZ表色系を平面図に表すと、光のスペクトル軌跡を包む三角形で表現される。
- XYZ表色系のひとつであるCIExy色度図は、平面で表示したものである。色再現域を単純化して三角形に内接する馬蹄形の図で表す。CIExy色度図では、中心W(白)に近づくほど彩度が低くなり、周辺に向かうほど高くなる。また、色度図の左下はBv、右下はR、色度図の頂部はGである。
- 印刷物とカラーモニターの色再現域を比べると、カラーモニターはプロセス印刷の再現域よりも大きな鋭角の三角形となる。
- 印刷ではRGBはCMYの混合によって作り出すため、RGBの頂に向かう領域は大きくおさえられ、一般に印刷の方が色の再現範囲が狭い。また、印刷物は可視光の中間域のGで表現レンジの制約が大きい。
➢ CIE L*a*b*
- 2つの色の違いを色差と呼び、その値を⊿E(デルタE)で表す。これを扱う表色系としてL*a*b*表色系が制定され、日本でもJIS(JIS Z 8729)となった。
- L*a*b*表色系ではL*で明度を表し、色相と彩度を示す色度をa*とb*で表す。a*とb*は色の方向を示し、+a*は赤、-a*は緑、+b*は黄、-b*は青のそれぞれの方向を示している。数値が大きくなるに従って色が鮮やかになる。
- L*a*b*はシステムやデバイスに依存しないこと、またRGBやCMYK に比べて色再現領域が広いことなどから、カラーマネジメントシステムやソフトウェアの標準カラースペースとして用いられている。
- 各工業分野で色の管理に色差(⊿E)が用いられている。一般人の色の弁別能力は⊿E 3以上であるが、機器のキャリブレーションでは⊿E 1以下で管理する。
2-2-4 色の評価
色を評価するには、光源や観察条件などを整える必要があることを理解する。
➢ 色温度
- 色温度とはある光源の色を絶対温度Kで示したもので、JIS「色に関する用語」には「完全放射体の色度と一致する試料放射の色度の表示で、その完全放射体の絶対温度であらわしたもの」とある。
- 色温度は、白色蛍光灯はおよそ4300K、快晴の青空はおよそ20000Kとなる。数値が低いほど赤色光の量が多く、高いほど青色光が多い。
- 一般的な光源の色温度は、印刷の標準光源に比べると高めのため、作業内容によってはカラーモニターでの色温度を印刷用に設定して使う。
➢ 演色性
- 演色とは、照明される光源の違いによって色の見え方が異なる現象をいう。その特性を演色性と呼ぶが、一般に演色性とは自然光と対比させた光源
の性質を表わすものである。 - 演色性は、ある光源のもとでの色の見え方が、同じ色温度の基準光源での見え方にどれだけ近いかをRa(演色評価数)で示す。
- モニターや蛍光灯などを選ぶときは、まず色温度によって区別し、演色性の数値を見て評価する。Raが100に近いほど高演色性の照明光といえる。
➢ 標準光源
- 日本印刷学会により印刷物色評価用標準光源が次のように決められている。相関色温度:D50(5000K ±250K)、平均演色評価数:Ra 95以上。
- 印刷物の色を評価するにあたっては、色評価用蛍光灯として演色AAA昼白色(5000K)の使用が望ましい。
- CIEの標準光源A、C、D65などのうち、印刷以外で一般によく使われる照明光源はD65であり、その色温度は約6500Kである。
➢ 観察条件
- 色の見えは観察環境によって異なる。観察者や対象物が置かれている環境や、照明、発光している光の特性などによって大きく変わる。
- 観察条件には大きく分けて3つの要素がある。
1) 照明の特性(光源の色温度、演色性、照度・輝度)
2) 照明の配置
観察するときに照明が直接目に入らないようにする。なるべく鏡面反射が気にならないようにする。
3) 観察するための周囲の環境
観察対象の周囲には、鮮やかな色や暗い色を置かないようにする。グレーが望ましい。 - 印刷物の色の厳密な比較や評価にあたっては、用紙、インキ、印刷条件、光源という条件をすべて同一にする必要がある。
➢ メタメリズム
- 分光反射率の異なる2つの色が、特定の光源下で同じ色に見えることをメタメリズム(条件等色)という。メタメリズムにより、ある条件下で等しく見えた色が別の条件下では異なった色に見えてしまうことが起こる。例えば、標準光D50で2つのものが同じ色に見えても、D65では違って見えることもある。メタメリズムには、湿潤・温度・光源などがあるが、一般にメタメリズムというと光源間メタメリズムを指すことが多い。
- 光源が変わって色が変化しても、メタメリズムがなく等色に見える場合がある。逆に演色性がないが、メタメリズムがある場合もある。
➢ モニターと反射物の観察環境
- モニターと印刷物などの反射物の色を比較する場合、モニターの輝度と照度とは、それぞれ別個に決めればよいというものではなく、両者の関係を考慮して設定しなければならない。
- モニターの輝度と反射物の照度の適正値は、モニターの基準白色輝度、周囲の状況などにより変化すると考えられるので、①モニターの設置・調整、②反射物(サンプル:未印刷の用紙など)の設置、③モニター側照度の調整(モニターの基準白色は、白に認識され、シャドウ部の階調再現が確認できる照度に調整する)、④反射物側の照度の調整(印刷用紙などの明るさ感がモニター基準白色の明るさ感と同じになる範囲に設定する。照度が高すぎると用紙の明るさ感が増し、モニターの再現範囲を超えてしまう)、という手順で設定することが望ましい。
- 一般的なDTP環境では、印刷物をチェックする校正環境はアナログ時代とは異なり、5000Kで500~600luxくらいの部屋でモニター管面の輝度80cd以下(できれば60~70cd)が望ましい。この環境下ならモニターの色と校正刷りが近似するはずである。
- 色を正しく判断するには、作業する現場の背景や壁などの色の整備から行うことが理想的であるが、第一ステップとして、照明光、照度によるモニター環境を整備することは比較的容易にできる。
- モニターの観察環境の整備や標準化によって、色の伝達がより効率的になり、色見本を見ながらモニター上で色修正をしたり、現場やクライアント側にも同様の環境を構築することによって、作業効率アップや品質向上になる。
2-2-5 カラーマネジメント
- DTPにおけるカラーマネジメントの目的のひとつは、印刷再現の予測である。
- ディスプレイに対しては、紙で再現できる範囲の色のみの表示が求められる。
- DTPデータの出力先がデジタルメディアの場合には、ディスプレイ間でも色が相似になる仕組みとしてカラーマネジメントが必要になる。
- ガモットは、ディスプレイやプリンターなどの物理的なデバイス(装置)が理論的なカラースペース内で再現できる色の領域であり、各デバイス固有のものである。
- カラーの入出力デバイスは、利用目的や発色の仕組み、設置環境などがそれぞれ異なり、管理されていないデバイス間では、相似の色再現ができない。
- デバイスインデペンデントカラーは、カラーデータの入力から出力までの工程で、個々のデバイスに依存しない色再現を目指している。
- デバイスインデペンデントカラーを実現するため、CIE(Commission Internationale de L’eclairage:国際照明委員会)が発表したカラースペースをデータの基準にすることが多い。
- この基準値を各デバイスのカラースペースにマッピングし、デバイスごとに補正値を用い、色の再現を行う。
- キャラクタリゼーションにより各デバイスの発色の特性を捉え、色変換用のパラメータを記述したデバイスプロファイルを作成する。
- デバイスの発色は日常的に変動するため、各デバイスの特性をデータ化したときの値を基準にし、使用中のデータを計測した上で、基準値に合わせるキャリブレーションを行う。
- 色の評価を行う環境は、外部からの色の映り込みを排し、標準光源を用いて、評価条件を一定に保つことが求められる。
➢ デバイスプロファイル
- DTP環境でカラーマネジメントを容易に行うために、OSレベルで色変換エンジンの使用を可能にすることや、デバイス特性を示すデバイスプロファイルデータのフォーマットに対する標準化が行われている。
- カラーマネジメントシステム(CMS)は、アプリケーション間やデバイス間の色調整を行う仕組みでOSの機能の一部として提供されている。Appleが提供しているCMSがColor Syncであり、Microsoft(マイクロソフト)が提供しているのがWCS(Windows Color System)である。Color SyncやWCSは、インターナショナル・カラー・コンソーシアム(International Color Consortium:ICC)の公表したデバイスプロファイルフォーマットの仕様であるICCプロファイルに対応している。
- デバイスインデペンデントカラーでは、異なる色再現領域をもつデバイス間でのカラーマッチングを行うために、汎用のカラースペースに変換する。CIEのXYZや、L*a*b*が共通のカラースペースとして使用される。
- デバイスプロファイルには、各デバイスの色再現能力を共通のカラースペース上で表した情報が記述されている。DTP環境では複数のデバイスを使用するため、各デバイスのデバイスプロファイルを参照し、異なるカラースペース間で相似した色が表現できるようにデータ変換を行う必要がある。
- アプリケーションがOSにRGB/CMYK変換を要求すると、OSはCMSを呼び出し、内蔵された色変換エンジン(CMM:Color Metrics Match / Color Management Module)に対してデバイスプロファイルを利用した色変換を依頼し、結果をアプリケーションに応答する。再現不可能な色については、最も近い色に変換される。色再現の品質は、デバイスプロファイルとCMMの精度に左右される。
- デバイスが異なると色再現域が異なることが多い。そこで事前に変換方針を決定してから変換を行う。この方針をレンダリングインテントという。再現不可能な色を置換する場合についても、レンダリングインテントに従い適した色に変換する。
➢ ICCプロファイル
- ICCプロファイルは、デバイスのカラースペースや色再現特性が記述されたデータファイルである。RGBとCMYKの変換を行う際や、ディスプレイやプリンターで出力する色を調整する際に参照し、正確な色の再現を実現する。
- ICCプロファイルは、デジタルカメラやスキャナーなどの入力デバイス(Input Profile)、ディスプレイといった表示デバイス(Display Profile)、プリンターといった出力デバイス(Output Profile)に対応した3つのタイプがある。
- 標準的なプロファイルは、デバイスの製造元により提供されることが多い。
- プロファイルは色の変換テーブルを含んでおり、RGBまたはCMYKとL*a*b*値の双方が定義されている。変換テーブルを編集することで、独自のプロファイルを作成することができる。
- カラーマネジメントの運用では、各デバイスプロファイルの設定や、画像データに埋め込まれたプロファイルの設定などを適切に行うことが重要である。デバイス間のカラーマネジメントを理解することで、プロファイルを二重に適用したことによる品質劣化の様なトラブルを防ぐことができる。
➢ ディスプレイ
- ディスプレイ表示と印刷結果を一致させるためには、色温度や発色範囲を管理するカラーマネジメントが必要である。
- ディスプレイは、加法混色型の装置であり、「白」を基準として色の調整を行う。印刷物の色を再現するために、「白」を調整できるキャリブレーション機能を搭載したディスプレイを使用することが望まれる。
- TVディスプレイの多くは色温度が9300K程度であり、パソコン用ディスプレイは、標準光源の昼光(6500K)と近似値ではあるが、いずれもDTPデータを表示させると色合いは実際の印刷物よりも青味を帯びる。
- 環境光はディスプレイの発色に影響する大きな要因のひとつである。一般的にDTP環境では、印刷物の色を評価する光源を使用し、ディスプレイの色温度は、5000Kに設定する。
- ディスプレイの色は、ディスプレイの蛍光体による発光と照明や太陽などの反射光による混合色となる。反射光は、色の再現に影響を与え、コントラスト比の低下をもたらすため、遮光フードを使用し、光の映り込みを防ぐ必要がある。
➢ キャリブレーション
- ディスプレイのキャリブレーション方法には、ディスプレイ本体のRGB表示を制御、調整するハードウェアキャリブレーションとPCのビデオカードから出力されるRGB信号を調整するソフトウェアキャリブレーションがある。
- キャリブレーション機能のないディスプレイのコントラスト調整では、コントラストを最大にし、明部(白地)の調整を行い、続いてブライトネス調整で、明部の明るさと暗部(黒地)の調整を行う。
➢ アプリケーション
- デスクトップ上で作業を行うDTPでは、出力デバイスに合わせたアプリケーション環境のカラーマネジメントを行う必要がある。アプリケーション上のワークスペース(作業スペース)に関する概念は、異なるデバイスやデータ交換に対応するために登場した。ワークスペースとして、RGBやCMYK、グレースケールなど、カラーモード毎にICCプロファイルを設定する。
- 各デバイス用のデータに変換する場合は、ICCプロファイルを都度設定することで対応する。「Japan Color 2001 Coated」といった標準規格に基づいたICCプロファイルを指定することもできる。データに標準的なICCプロファイルを埋め込むことで、デバイスに依存しないカラーデータの交換が実現できる。
- RGBからCMYKへ変換するといった、あるカラースペースから別のカラースペースに変換する場合は、レンダリングインテントを指定する。Adobe製アプリケーションでは、レンダリングインテントとして「知覚的」「彩度」「絶対的な色域を維持」「相対的な色域を維持」という4つの選択肢がある。デジカメ時代になってPhotoshopのデフォルトは「知覚的」に設定されているが、モニターに関しては「相対的な色域を維持」に設定されている。
- 入力デバイスから得たRGBデータや、RGBプロファイルの設定が異なるデータを扱う場合、共通のワークスペースを指定し、デバイス間のカラースペースを共有することが可能である。印刷用データへの変換は、データがもつ共通のワークスペースにおけるカラースペースとCMYKの設定が大きく影響するため、印刷条件に合わせたインキの色特性、ドットゲイン、インキの総使用量の制限、墨版の設定などを行う。
- 印刷条件ごとにプロファイルでテーブルを用意することも可能であり、目標値となる印刷物の測色結果により作成したプロファイルを設定できる。
➢ アイソメリックマッチ
- 対象物の正確な色再現、色合わせを行う方法にアイソメリックマッチと呼ばれるものがある。これは分光反射率を近似させて目標色に合わせようとするものである。これに対応した色再現システムを分光的色再現システムやナチュラルビジョンと呼ぶこともある。
- アイソメリックマッチは、分光反射率が完全に合致した場合、メタメリズムによる色変化を完全に取り去ることができ、理想的な色合わせの方法である。この方法は、デジタルカメラ入力では撮像システムの技術革新により実運用も可能であるが、インキなどを用いて色を合わせる場合は目標色と同じ色材・下地の場合でないと、反射率を合致させることは難しく、手持ち色材を利用する着色業では利用範囲が限られる。
- スペクトルを一致させるアイソメリックマッチに対して三刺激値を目標色に合わせようとするカラーマッチングをメタメリックマッチと呼ぶこともある。
- メタメリックマッチでは、視覚色を三刺激値で一致させようとするため、計算する光源下では一致しても、他の光源では色が合わないリスクつまりメタメリズムを持つが、手持ち色材を利用してほとんどの色を出すことができるメリットがある。