【DTPエキスパートカリキュラムver.12】[DTP]1-7 文字

掲載日:2016年11月1日
このエントリーをはてなブックマークに追加

文字データを異なるプラットフォームで出力すると、文字化けではないが文字の形状が一致しない場合がある。「書体」「フォント」「字種」「字体」「字形(グリフ)」の区別など、文字の同異判定の基準を理解する。

1-7-1 書体

  • 書体とは、統一的な理念に基づいて制作された1組の文字、または記号のデザインであり、タイプフェース(typeface)と同義である。ある書体における文字の太さ、字幅、傾きなどのバリエーションの集合を書体ファミリーという。
  • 欧文書体は、中世後期のグーテンベルクの活字から、その後ローマ時代に作られたローマン体を活字に置き換えた書体を経て、今に至っている。印刷技術や出版の発展に伴って、また印刷物の用途に合わせて可読性、美術性、新規性などを工夫し、多くの書体が開発されている。
  • 和文書体は、中国の伝統的「書」に由来する筆書系、伝統的活字書体、庶民文化に由来する江戸文字、写植以降非常に増えたディスプレイ書体、日本独特の仮名書体など、多様な起源を持つ。

1-7-2 字体

  • 文字は、何らかの意味を表すものであり、その意味によって字種に分類される。異なる字種は、原則としてそれぞれ異なる字体を有する。しかし、異なる字種が同一の字体を有する場合も稀にある。これらは同形異字と呼ばれ、視覚的には区別することができない。
  • 1つの字種に複数の字体が併存していることがある。それらの字体はそれぞれ異なる字源から成立している場合もあるし、同じ字源から発生しながらその表現が歴史的・地理的に変化していった場合もある。字義、字音が等しい同一の字種でありながら、互いに異なる字体を有する文字を異体字と呼ぶ。異体字のなかで、規範として選ばれている字体を正字体と呼ぶ。

1-7-3 字形(グリフ)

  • 字形(じけい)とは文字の具体的な形状であり、書体やデザインの違いなど文字の視覚的な差異はすべて字形の違いとして捉えられる。図形文字、グリフ(glyph)と呼ばれることもある。

1-7-4 タイポグラフィー

  • タイポグラフィーは、古くは活版術のことであるが、広く印刷における文字組の視覚効果や体裁の総称として用いられている。
  • タイポグラフィーは、グラフィック素材としてテレビや映像メディアにも活きる技法である。欧米では、タイポグラフィーには書体の歴史的な発達や書体デザインの知識も含む。日本でも、縦/横組、和欧混植、かな混植など伝統的慣習的なスタイルが確立している。もともと正方形の漢字書体を縦にも横にも組むものとして日本のタイポグラフィーは発展した。

1-7-5 符号化文字集合

  • コンピューターは、文字をコード(符号)化して、その値で識別している。文字コードとは、たとえば日本語のある文字の範囲(文字セットという)の文字の1つずつに識別番号を割り振ったものであり、その一式を符号化文字集合という。
  • 異なるコンピューターシステム間での文字データの交換を可能にするために、基本となる文字セットの文字コードは標準化が行われている。文字コード系が異なれば、コード化している範囲もコード番号も異なる。
  • 入力や編集の各段階で、文字データを受け渡しする場合は、どのような文字コードを使用して作成されているかを慎重に確認する。
  • 標準化された主な文字コードには、ASCIIコード、JISコード、シフトJISコード、Unicodeなどがある。
  • JIS X 0208は情報交換用の2バイト符号化文字集合を規定する日本工業規格で、6,879図形文字を含んでいる。1978年にJIS C 6226として制定され、1983年、1990年および1997年に改正された。
  • JIS X 0213は、JIS X 0208:1997を拡張した日本語の符号化文字集合を規定する日本工業規格である。2000年に制定、2004年、2012年に改正された。
  • JIS X 0213は、JIS X 0208を拡張した規格でJIS X 0208の6,879字の図形文字の集合に4,354字が追加され、計11,233字の図形文字を規定している。JIS X 0208を包含し、第三・第四水準漢字などを加えた上位集合である。

➢ フォント

  • フォント (font) は、本来「同じサイズ、同じ書体デザインの一揃いの活字」を指す言葉であったが、現在ではコンピューター画面に表示したり、紙面に印刷するために利用される字形データの一式を意味している。金属活字と区別して、デジタルフォントと呼ばれることもある。
  • また、書体という言葉は、現在ではフォント(の使用ライセンス数)を数える単位としても用いられている。
  • フォントフォーマットの代表的なものにTrueTypeとOpenTypeがある。TrueTypeは、AppleとMicrosoftが共同で開発したフォントフォーマットで、パソコンOS側がラスタライズ機能を備え、画面表示やプリント出力を行う。その後、AdobeとMicrosoftが共同で開発したのがOpenTypeであり、異なるプラットフォーム間でのフォント利用やフォント管理の効率化が実現されている。
  • ラスタライズとは、アウトラインフォントを出力するときに、文字の描画線を定義したデータを、指定された文字サイズにして補正し、出力機器の解像度に合ったビットイメージに変換する処理を指す。

1-7-6 文書データ

➢ テキストデータ

  • 目に見える文字以外はスペースや改行、タブコードだけを使って構成されたファイルをプレーンテキストという。
  • プレーンテキストは異なるコンピューター環境や、異なるアプリケーションでも文字コンテンツが変わらないので、文章原稿データの整理の段階や原稿データの保存に使われているが、実質的にシフトJIS相当の字種しか扱えないという問題がある。

➢ PDF

  • PDFはPortable Document Format(ポータブル・ドキュメント・フォーマット)の略称で、電子上の文書に関するファイルフォーマットである。特定の環境に左右されず、表現の再現性を確保しつつデジタル化された文書データとして利用することができる。
  • AdobeはPDF仕様を1993年より無償公開していた。2008年7月、国際標準化機構によってISO 32000-1として標準化された。
  • PDFはフォントの埋め込み(エンベット)、ICCプロファイルの埋め込みやプロファイルを参照した色変換を行うことができる。
  • PDFには、電子署名機能、コメント記入などが行える注釈(annotation)機能、パスワードと128ビット暗号化によるセキュリティ機能などが装備されている。
  • PDF/Xは、国際標準化機構によって規定されたグラフィックデータ交換を目的としたPDFのサブセットである。PDF/Xによるデータ入稿のもっとも大きな利点は、カラースペース、フォントや画像に関する規定が明確になっていることで、出力に関するトラブルを回避し信頼度が向上すること、またフォントやOS、アプリケーションのバージョン等、出力側の環境に依存しないことである。PDF/Xには、規格内容の追加により、PDF/X-1a、PDF/X-3、PDF/X-4など複数のバージョンがあるので、各バージョンの規格内容を把握し、印刷用データ受け渡しの際にどのバージョンに準拠したデータであるのかを確認する必要がある。
  • PDF/Aは、電子文書を長期保管用に作成、表示、および印刷するための仕様をISO規格として標準化したものである。またインタラクティブな交換に使用されるPDF/Eがある。

1-7-7 文字組版

  • 文章読解の妨げにならないように文字を配列する技術が組版である。DTPでは、ワープロに比べて、紙面設計の自在さや使用フォントの使い分けなどにより多様な組み方ができるため、紙面に表情をつけることができる。
  • 文字組版の要素には、組み(縦組み・横組み)、文字サイズ、書体、字送り、字詰、行間があり、それに加えて禁則処理、約物処理などを考慮して行う。
  • 日本語組版の基本的アルゴリズムは、JIS X 4051:2004「日本語文書の組版方法」に規定されている。
  • また、W3C(World Wide Web Consortium)は、2012年4月Requirements for Japanese Text Layout(日本語組版の要件)という技術ノートを英文、および日本語で発行した。JIS X 4051:2004の平易で実用的なガイドとして、世界的に参考にされている。

➢ 欧文組版

  • 欧文文字は、文字によって高さや幅が異なる。高さはいくつかの基準線に揃えられているが、各文字の幅は異なる。そのため、一定の字間で組むだけで、プロポーショナルな組版ができる。
  • 欧文では、文字はベースラインに揃うように設計され、また、アセンダライン、キャピタル(キャップ)ライン、ミーンライン、ディセンダラインという基準線をもつ。
  • 欧文組版では、ジャスティフィケーションは、①単語と単語の間のスペースを1行中で調整する、②1つの単語の字間をベタ組みではなく少し空けて調節する、③ハイフネーション処理をする、の順序で行う。ハイフンの位置はどこでもよいわけでなく、各国語別に異なるので各国語の辞書を参照する。
  • 欧文組版形式のひとつに、ジャスティフィケーションを行わないラグ組みがあり、一般的に本文組みの場合は、左揃えまたは右揃えの形式がある。

➢ 和欧混植

  • 和文ではフォントはセンターラインしか基準線がなく、一方欧文フォントはxハイトやディセンダが一定しないので、バランスのとれた書体選択に留意する必要がある。
  • 和文と欧文の間が接近しすぎるとき、また欧文のセット幅が異なるため行長に端数が生じる。