資格学習用アプリ「資格サプリ」や仕事に活かせる講座を中心とした「スクー」など、学習用の動画サービスが増えている。その中でも、特に教育の新しい形として注目されているのが「MOOC(ムーク)」と呼ばれるオンライン講座だ。
現在、日本版MOOC利用者は20代から60代の社会人層がボリュームゾーンだと言われている。一度社会に出てから学び直したいという需要があり、ビジネスに役立つ講義の需要が高い。そのため、2015年4月からはTACなど民間による提供も開始し、コンテンツの拡充を目指している。印刷業界にとっては動画制作、デジタルやPOD教材制作などのビジネスを展開できる可能性を持っている。
今回、MOOCを推進する日本オープンオンライン教育推進協議会の福原美三氏に話を伺った。
大学単独からプラットフォームへの展開
福原氏によると、もともと大学講義のオンライン化は2003年にMITが全ての講義を無料で公開したオープンコースウェア(OCW)と呼ばれるものが始まりだという。これは非常にインパクトがあり、世界中で広がった。国内でも多くの大学がシラバスや講義動画、資料などを公開していった。
次いで2012年にアメリカで始まったのがMOOC(大規模公開オンライン講座)である。これはオンライン上の無料講座を受講して修了証が取得できる教育プログラムで、コーセラ(Coursera)、エデックス(edX)など100万人規模のサービスもある。ヨーロッパをはじめ各国での利用が急拡大するなか、国内では2013年秋には産学連携によってMOOCを推進する日本オープンオンライン教育推進協議会が設立された。
オープンコースウェアとMOOCの違いは「教科書(=オープンコースウェア)か、講義(=MOOC)か」であると福原氏は言う。オープンコースウェアではリアルな講義で用いたテキストや課題、授業動画などがオンライン上で公開されているが、あくまでもコンテンツ単位で、それだけを見ても講義を理解することは難しい。対してMOOCはコースに沿って受講し、テストや指導を 受けながら学んでいくようオンライン専用に組み立てられたプログラムである。一方向ではなく、受講者同志がコミュニティ上で質問をしあったり、議論をしながら学習していく双方向性も備えている。
また大学ごとにコンテンツを公開していたオープンコースウェアと異なり、MOOCではひとつのプラットフォーム上で、複数大学の講義を受講できるのが大きい。大学側にとっては多くの受講者の目に触れやすい、コンテンツを標準化できる、というメリットがある。受講者にとってはひとつの場所でいろいろな大学の講義が受けられるというメリットがある。
現在、国内には協議会が公認したMOOCの配信プラットフォームとしてガッコ、オープンラーニングジャパン、オーユージェイ・ムークの3つがある。なかでも2014年より日本版MOOC第一弾としてスタートしたガッコ(gacco・NTTドコモとNTT
(JAGAT 研究調査部 中狭亜矢)
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