2月5日(金) 13:00〜15:00
----------------------------------------------------------------多くの出版社にとって返本問題は深刻な事態となっている。返本は売り上げや利益を圧迫するだけでなく、在庫の保管や廃棄コストもかかってしまう。自社内にデジタル印刷・製本設備を導入し、小ロットの生産ができれば、少部数の出版や重版も可能になる。 米国では、取次大手のイングラムの子会社であるライトニングソースの例が参考になる。同社は1998年に設立されたオンデマンド出版に特化した印刷企業である。出版社の注文に応じて、年間5000万冊をオンデマンドで製造している。1冊あたりの平均部数は1.8部とのことであり、受注後24時間以内に発送している。 国内では大手出版社が自社にデジタル印刷設備を導入し、小ロットの書籍出版を始めている。 講談社は2012年にロール紙タイプのインクジェット印刷機と一貫製本システムをふじみ野DSR工場に導入し、社内での小ロット印刷・製本を実現した。3年が経過し、現在では500部程度の文庫・新書の再版を中心に製造している。同工場の隣接地にはパートナー会社のオフセット印刷工場や製本工場が設置されており、「講談社ブックファクトリー」として稼働している。 小学館はグループの倉庫会社にトナー式のデジタル印刷機・製本システムを設置し、主にコミックスの重版に使用している。数10巻以上の長尺コミックスは欠本が多いという実態がある。欠本を解消するには300~500部程度での重版が必要である。そのために自社内でのデジタル印刷に踏み切った。コミックスのオフセット用紙がそのまま使用できるため、トナー式のデジタル印刷機を選択したという。 インプレスR&Dは、アマゾンが2012年に始めたPODサービスを利用してオンデマンド出版を始めた。注文があれば1部単位で製造(ブックオブワン)し、発送する方式で、用紙代・印刷代などの初期費用をかけない在庫レス出版を実現した。インプレスR&Dは、2015年には他の出版社や一般企業・法人向けの出版取次サービスとしてこれを拡大している。 出版ビジネスの打開策としてオンデマンドの小ロット出版やブックオブワンの重要性はますます拡大していくだろう。本セッションでは出版社から見た小ロット・オンデマンド出版の現状と課題、今後の展望を議論する。